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袖の振り方

 事始めから初詣、成人式とあでやかな着物は冬枯れの街を華やかに彩る。若い女性の晴れ着として定着している振り袖は、もともと男女問わず両袖脇が開いた子ども着だったという▼暑さから体温を逃す配慮だと近松門左衛門も文楽で触れたが、その江戸期に袖が徐々に延び、男女の愛情表現に用いられた。乙女は揺らして独身をアピールし、振り方で求愛に受け答えしたのが「振る」「振られる」の語源らしい▼こちらはつれない態度を一転させた。消費税の軽減税率導入で、安倍晋三首相は当初「無い袖は振れぬ」としていたが、公明党案をのんで対象を飲食料品全般に広げた与党合意を「最善の結果」と歓迎した▼来夏の参院選で勝つため袖を分かつまいと官邸が主導したとされる。抵抗していた自民党側も財源問題を先送りし、業者受けを狙って外食への拡大を一時持ちかけた。政治の軽さにあきれる▼首相は無いはずの袖を専ら経済界に振り、好循環のためと賃上げ、設備投資を促すが生返事。それでも求められるままに法人税減税や自動車税制の優遇に前のめりだ▼どうみても多額の政治献金をする余裕のある業界や企業の恩恵が大きい。政権の袖に入る献金の重みが影響していると思いたくないが、消費税も政党活動も支える国民を袖にしては困る。

[京都新聞 2015年12月15日掲載]

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