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首相の痛感

 安倍晋三首相は「痛感」という言葉の意味を本当に理解しているのだろうか。2014年10月30日、衆院予算委員会での自らの発言をよく思い出してほしい▼「国民に大変申し訳ない思いだ。任命責任者である私の責任だと痛感している」▼政治団体の不明朗な政治資金支出をめぐって小渕優子経済産業相が、選挙区でのうちわ配布問題で松島みどり法相が辞任した直後にそう謝罪したはずだ。教訓は生かされなかったということか▼甘利明経済再生担当相が辞任した。建設会社側から現金計100万円を受け取ったと認めた。秘書は受け取った500万円のうち300万円を使っていたという。これから本格化する新年度政府予算案や重要法案の国会審議、さらには夏の参院選への影響を考慮しての判断だろう▼甘利氏の辞任表明直後、首相は「任命責任は私にある」と謝罪したが、どう責任を取るのかは今回も言及しなかった。痛感したのはむしろ、環太平洋連携協定(TPP)交渉や経済政策アベノミクスの司令塔だった側近中の側近を失ったことではないか▼だが、期待できる面もある。秘書に金銭疑惑が持ち上がった場合に、大臣がすぐに引責辞任する前例となっていくことだ。聞き飽きた「秘書が…」という責任逃れはもう通用しなくなると思いたい。

[京都新聞 2016年01月29日掲載]

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