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廃棄食品横流し

 冷凍カツに端を発した廃棄食品の不正流通の広がりは、これまで判明した範囲でもスーパーやメーカーなど20社以上の三十数種類に及んでいる▼食の安全面や不正表示の法令違反に対して行政や司法による実態解明と防止の手だてが急務なのは当然だが、この機会に日ごろの私たちの食生活に思いを巡らせたい▼欠かせない存在として定着したコンビニエンスストアやファストフードは文字通り「便利さ」「早さ」が最大の利点だ。工場で大量に調理した食品を素早く流通させるシステムが、網の目のようなチェーン店を支える▼消費者は、生産・販売側に味と安全性と適正な価格を求める。さらに、いつでも、どこでも、注文したらすぐに、もっと安く…と要求する条件を増やせば増やすほど食を供給するプロセスに、きしみが生じないだろうか▼亀岡市の桂真由美さん(44)は自宅で、米麹(こうじ)を手作りして販売している。購入した人がみそや甘酒として口にするまでには生き物としての菌が成長する長い期間がかかる。「すぐに食べることができません。その不便さにこそ、『待つ』ことの喜びがあります」と桂さんは話す▼便利さと早さという条件をたまには外してみてはどうだろう。遅くて面倒くさいことの向こうには豊かな時間と味の世界が広がっている。

[京都新聞 2016年02月10日掲載]

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