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老後の支え

 まるで人ごとではないか。年金の積立金運用が悪化している状況への安倍晋三首相の国会答弁である。想定した利益が出なければ「当然支払いに影響する」と年金給付額を減らす可能性を言明した▼運用悪化の理由は株価下落だ。株や債券で135兆円を運用しているが、昨夏の世界同時株安で3カ月間に7兆8千億円もの損失を出した▼一時戻った国内株価も年明けから15%以上急落し、昨夏を上回る損失状況との見方もある。株など「持たざる者」も気が気でない▼安倍政権は積極運用を成長戦略に掲げ、株式で運用する比率を5割に倍増させた。高い利回りとともに巨額資金の投入による株高が狙いだった。年金積立金という「人のふんどし」を都合良く使いながら、失敗した場合のツケは国民に回すという姿勢はいかがなものか▼年金は皆の老後を支える貴重な財産だ。日本は現役世代が払う保険料で高齢者に給付する方式のため、少子高齢化で重くなる子、孫世代の負担軽減に積立金の備えが欠かせない▼ここ2、3年通しての運用黒字はまだ一定あるが、株相場のもうけと損は表裏一体。年金資金がさらされる市場リスクは格段に高まった。かつて年金改革で掲げられた「百年安心」どころか、日々気をもむようでは家計の財布のひもも緩むはずない。

[京都新聞 2016年02月18日掲載]

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