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廃線の楽しみ

 廃校や廃村を目にすると、自分とは縁もゆかりもないのに、もの悲しさとともに懐かしさを感じる。にぎやかだった子どもたちの歓声、往時そこに暮らした人々の生活ぶりを思わず想像してしまう▼運行をやめ、廃止された鉄道路線「廃線」がブームだそうだ。ノンフィクション作家の梯(かけはし)久美子さんが全国の路線跡をたどった「廃線紀行-もうひとつの鉄道旅」(中公新書)が旅の楽しさを伝える▼廃線に至るにはいろいろな事情がある。戦時中の軍用路線もあるが、多くは戦後の過疎化や自動車輸送拡大で使命を終えた。レールはなくなっても堅固な橋やトンネルが遺構として姿をとどめている▼廃線跡は、京都にもある。関西鉄道大仏線もその一つだ。現在のJR関西本線・加茂駅と奈良駅を結んでいた。明治31年に開通し、名古屋や伊勢方面から奈良の大仏さんに向かう参詣客でにぎわった▼英国製の赤い蒸気機関車が人気だったが、路線の統廃合により、わずか9年の短命で営業をやめた。木津川市内には車内灯に使った石油を保管したランプ小屋や赤れんが造りの鉄道橋がそのまま残る▼人口減少が続き、地方消滅までが論じられる。将来、廃線は増え続けるのだろうか。滅んだ鉄路は二度と生き返らない。廃線ばかり目立つ国を旅するのは寂しすぎる。

[京都新聞 2016年02月24日掲載]

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