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小さな俳人

 小さな俳人が、この春卒業する。本紙日曜版ジュニアタイムズの「ねんてん先生の575」で活躍した西田翔君だ▼小学生以下を対象にしたこの欄は2009年4月に始まった。西田君の登場は翌年から。入学と同時に<がっこうのさくらのうみでおよいだよ>の句を寄せた。以来毎週3句、6年間で約900句を投句、うち97句を紙面で紹介した▼圧倒的な句作の陰には日々の悩みもあったろう。励ます母親とも、けんかしながらだったと聞く。朝顔の成長や雪の日の登校風景、部活動の陸上など生活すべてを題材にしてきた▼江戸初期、京都で松永貞徳を中心に俳句が大流行した。花鳥風月を詠む和歌と違い、日常の言葉で作ることで裾野を広げたという。素直な目と言葉で描く世界が俳句の原点とも言える▼指導する俳人坪内稔典さんは「五七五の言葉の絵になったとき秀句ができる」という。<いろづくとグッとふんばる渡月橋><おたがいに息で輝く冬星座><十二歳稲穂がぼくにおめでとう>。西田君の句も、わずか17文字が色を伴って立ち上がってくる▼卒業は寂しい。でも、新たなステップで見える景色はさらに広がるだろう。彼を励みに、毎週のように投句する“後輩”たちもいる。言葉は人を変える力にもなる。心を一層研ぎ澄ませてほしい。

[京都新聞 2016年03月22日掲載]

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