凡語 京都新聞トップへ

AC/DC

 誰もが知る発明王エジソンは失敗王でもあった。豊かな成果を得るために試行錯誤で失敗するのは当然で、エジソンも失敗ではなく勉強だと思え、という趣旨の言葉を残している▼とはいいながら汚点といえる手痛い失敗もある。19世紀末の電力事業の規格をめぐる競争と確執だ▼エジソンは自らの会社が手がける直流送電を推進し、電気工学者で発明家のニコラ・テスラが実用化の道を開いた交流送電システムと対立した▼当時の直流送電は発電所から2~3キロまでしか供給できず、変圧器を用いて遠くまで送電できる交流の優位性は明らかだったが、エジソンは、交流は危険と印象づけるため野良犬を電気ショックで殺したり、電気いすに採用させたりして、なりふり構わず妨害したという▼結局、この「電流戦争」は、ナイアガラの滝を利用した水力発電所に交流方式が採用されて、テスラ陣営側の勝利に終わった。交流システムによる発電、送電は世界の電力事業の標準となり、今やエネルギーの主役だ▼日本できょう、電力小売りが全面自由化される。8兆円の巨大市場だけに300社近く参入する予定という。売り込みは熱心だが、各家庭にとって最適な電力会社を選ぶのは簡単ではなさそうだ。エジソンのように意固地にならず、じっくり考えたい。

[京都新聞 2016年04月01日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)