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地震加藤

 またも地震列島の怖さを見せつけられた。崩れた家屋で多数が死傷し、繰り返す余震におびえる避難住民の姿に胸を締め付けられる▼どこで起きても不思議でない-が学者の見方だ。歴史を振り返れば、京を襲った慶長伏見地震(1596年)では伏見城が崩落し、城内の数百人が圧死。東寺も倒壊するなど市中の死者4万5千人とも伝わる▼身一つで庭に逃げた天下人・豊臣秀吉を家臣加藤清正が助けた逸話は歌舞伎「地震加藤」で知られる。謹慎中の禁を破っても主君を救った忠義話だが、見舞いこそすれ救出に活躍したというのは後世の脚色らしい▼とはいえ目の当たりにした伏見の惨状は居城の熊本城に生かされた。近江の石工集団「穴太(あのう)衆」を迎えて堅固な城郭を築き、約270年後の西南戦争にも耐えた。西郷隆盛が「清正公に負けた」と嘆いた言い伝えは有名だ▼その難攻不落の名城も今回の熊本地震は傷つけ、各所の石垣や塀が崩れた。伏見地震と同じく内陸活断層による直下型地震とみられ、突然襲い来る破壊力のすさまじさを思い知らされる▼現地の救援・復旧活動と避難者支援に全力を挙げるとともに、一人一人が万一の備えを確認したい。清正は平時も米3升と味噌など腰兵糧を肌身離さなかったという。忘れてはならない心構えだろう。

[京都新聞 2016年04月16日掲載]

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