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グラナドス

 十数年、ピアノを習い、モーツァルトやベートーベン、バッハを経て、辞める間際にグラナドスに魅了された。だが、学校の音楽の授業もスペイン民族楽派まで行き着かず、いまひとつ知られていない作曲家のようだ▼今年は没後100年にあたる。1916年3月24日、米国公演を終えて帰国の途上、英仏海峡で船がドイツ潜水艦に急襲された。いったん救出されたが、妻の姿を波間に見て再び身を投じたと伝わる。48歳だった▼カタルーニャ地方に生まれ、バルセロナで音楽アカデミーを開いた彼はロマンチストで情にもろく、弟子や友人に愛されたという。孫弟子にピアニスト故アリシア・デ・ラローチャさんがいる▼節目の年、代表曲「スペイン舞曲」や「ゴイェスカス」を、ギタリスト藤井眞吾さんが、京都市中京区の町家「アートステージ567」で毎月開く音楽会で弾いている▼会は2006年に始まり、今月21日に110回を迎える。30人ほどで満席の、大きな木の梁(はり)がある空間は爪弾く音を人が語りかけるように明確に伝える▼本来はピアノ曲だが、グラナドスの哀愁を帯びた美しい旋律はギターにふさわしい。音楽は、時に騒ぐ心を静め、気持ちを後押ししてくれる。先月の会は、熊本地震の被災地に思いを寄せる、祈りのひとときになった。

[京都新聞 2016年05月07日掲載]

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