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かわいい子には…

 かわいい子には旅をさせよ、というが、もちろんそんな文字通りの「旅」をさせる気はなかったろう。北海道の林道で親に置き去りにされた7歳の男の子が6日ぶりに保護され、家族が再会した▼発見場所は数キロ離れた自衛隊演習場内の宿泊施設。道中どんなに心細く、どんなに不安な夜をひとり過ごしただろう。きのう朗報が伝わるまで全国の人々が、ときに子どもの、ときに親の身になって案じたに違いない▼「行き過ぎた行動で、息子に大変つらい思いをさせた」。父親の表情には、安堵(あんど)よりも悔悟と自責があった。確かに、どんな危険が潜むかしれない山林での置き去りは、しつけの域を超えていると批判されても仕方がない▼当初「世間体を気にして」警察に正直に事情を話さなかったのも思慮を欠いた。ただこの6日間で相応の代償は払ったのではないか。世に完璧な親はいない。子を上手にしかることの難しさは、誰もが感じるところだろう▼男の子に大きなけがはないという。けれど心の傷は目に見えない。父親は今まで以上に愛情を注ぎ、成長を見守ると語った。どうかそうあってほしい▼連日、かけがえのない命のために大勢の捜索隊がやぶに分け入り、多くの友達が無事の報を喜んだ。男の子のことを誰も、決して置き去りにはしなかった。

[京都新聞 2016年06月04日掲載]

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