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小京都を訪ねる

 北は秋田県仙北市の角館(かくのだて)から、南は鹿児島県南九州市の知覧(ちらん)まで、全国に小京都と呼ばれる地域は数多い。京都を思わせる町並みが残り、何か懐かしさを感じさせるという意味なのだろう▼先日、機会を得て小京都の一つ広島県竹原市を訪れた。瀬戸内海に面した穏やかな町である。平安時代は京都の下鴨神社の荘園として栄え、その名残が今も生き続ける小都市として知られる▼中世は港町として栄え、江戸時代以降は製塩が地域の財政を支えた。赤穂に学んだ塩田が急速に衰えをみせた1960年、町の姿は一変する。広大な塩田は埋め立てられて、その跡地は新しい市街地になった▼そっくり残された旧市街地には江戸から明治の豪商や塩田経営者の住まいが並ぶ。今、一帯は重要伝統的建造物群保存地区に指定され、美観を求める人でにぎわう。しっくい壁と「竹原格子」と呼ぶ意匠を凝らした造形は深い趣がある▼「日本外史」を著した頼山陽の祖父以来の旧家屋も残る。NHKの連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった竹鶴政孝が生まれ育った酒造店が健在で、奥さんのリタさんと仲良く並ぶ銅像が飾られていた▼山手に古い寺が三つ並んでいる。清水寺の舞台を模した観音堂からの眺望も格別だ。半日の滞在では巡り切れないのが残念だった。

[京都新聞 2016年07月01日掲載]

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