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ソフトパワー

 人波から期せずして起こった拍手と「サヨナラ」の声を背に-。38年前のきょう廃止された京都市電の最終運行を報じた京都新聞の記事だ▼日本初の路面電車を琵琶湖疏水、水力発電と並ぶ近代京都の偉業ともたたえた。幕末の動乱で焼け、東京遷都で沈滞した京都を活気づけた3大事業だが、空前のインフラ整備も京都再興策の一部にすぎない▼ソフトの仕掛けの一つが、内外の物産と見物客を集める博覧会だ。維新3年後の国内初開催から西本願寺や御所などを借りて毎年行い、1895(明治28)年には国主催の内国勧業博覧会も誘致。これに合わせた電鉄開業で113万人が訪れた▼ただの人寄せではない。多彩な染織工芸品を競わせつつ西欧の最新機器を紹介した。一方で大学や工業研究所を設け、お雇い外国人も招いて科学技術を吸収する産業近代化の手段だった▼はてさて、現代の祭典は内容より「入れ物」の話ばかり。4年後に迫る東京五輪は、開催費が立候補時から4倍の3兆円を超す恐れから施設見直しが持ち上がった。「復興」「コンパクト」のうたい文句がむなしい▼大阪府も9年後の万博誘致に向け、1200億円超の会場整備費や鉄道延伸を想定する。ツチ音を響かせ「夢よもう一度」でなく、どんな中身で何を発信するかが大切だ。

[京都新聞 2016年09月30日掲載]

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