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日ソ共同宣言60年

 <もはや「戦後」ではない>。そんな言葉で1956年の「経済白書」は高度成長の始まりを告げた。敗戦からの復興は目覚ましく、「神武景気」ただ中だった▼だが終戦直前に日ソ中立条約を破り参戦したソ連とは11年間も「戦争状態」が続いていた。それに終止符を打ち、両国が国交回復した「日ソ共同宣言」調印から、きょう60年になる▼モスクワでの調印式を伝える当時の本欄は<北の窓がやっとあいた>と感慨深げに記している。共同宣言には平和条約締結後の歯舞、色丹2島の引き渡しが明記されたとはいえ、<理づめではどうにもならない事柄は、後日回しとなった>と、ちくりと皮肉った▼<領土の完全タナ上げではなかったが、おろすのはなかなか大変なようである>。残念ながら凡語子の先見は的中し、いまだに平和条約も領土返還も実現していない。逆にソ連を継承したロシアは北方四島の実効支配を強める▼安倍晋三首相とプーチン大統領が「新たなアプローチ」に基づく交渉で歩み寄り、12月に山口県での首脳会談に臨む。首相は包括的な経済協力を示して2島返還以上の譲歩を促すが、対立の構図は60年前と変わらない▼さてロシアの決断を引き出す融和戦略が奏功するか。難題の「タナおろし」へ、再び日本外交の真価が問われる。

[京都新聞 2016年10月19日掲載]

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