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コト消費

 あの騒動は何だったのか。後になって首をかしげる出来事の一つが、オイルショック時のトイレットぺーパー買い占め騒ぎだろう▼1973年のきょう、大阪・千里ニュータウンのスーパーで在庫全て売り切れた-とのニュースが全国に飛び火し、翌朝から列島中の売り場に客が殺到した。実際は紙不足の状況でなかったが、高度成長で得たモノにあふれる暮らしを失う不安が連鎖したのだろうか▼43年たった光景は対照的だ。先週来にぎわった「ハロウィーン」。後に脱ぎ捨てられたごみの山はいただけないが、若者らが趣向を競い非日常の仮装自体を楽しむ消費感覚を再認識した▼所有こそ豊かさという「モノ消費」に代わり、イベントや趣味、見聞を広める体験事に充てる「コト消費」が広がっている。かつて応接間を飾った本や音楽の全集もスマホで持ち歩き、定額通信で読み放題、聴き放題も登場しては無理もない▼空前の訪日客2千万人を超えた観光も同じ。「爆買い」が陰る一方、京都では舞妓体験や寺での座禅、京野菜の収穫などが人気という▼東京五輪に向け政府が訪日客倍増を掲げ、京都市は6千室の宿泊先増設が課題というが、情緒を楽しんでもらえる客数には限界がある。一時の騒ぎだったとならないよう「古都」消費に知恵を絞りたい。

[京都新聞 2016年11月01日掲載]

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