凡語 京都新聞トップへ

「くじ」付き年賀状

 きょうから年賀はがきの受け付けが始まる。となれば大みそかまであっという間。いつもながら仕事や家事の合間の宛名書きは進まず、相手がくれた今年のはがきをつい読み返したりするうち時間が過ぎてしまう▼通信の途絶えた戦後の混乱期、互いの消息を確かめる方法として年賀状は普及した。京都の男性が「お年玉くじ」付きはがきを国に提案したのがきっかけだったことは小欄で以前紹介した▼この話には続きがある。提案に国は乗り気でなかったが、男性の熱意が勝って世界初のくじ付きはがきが1949年12月に発行された。ところがほとんど売れず、男性は制度を廃止されまいと土地を手放し、その金で大量の売れ残りを引き受けたそうだ▼幸い翌年から人気が出て制度は存続。ただ男性の家では年中どこへ出すにも山積みの年賀はがきを使うことになったと、息子で自動車会社創業者の林みのるさんが著書「童夢へ」に書いている▼くじ付きはがきは戦争の焼け跡に夢を与えた。当初「賭博的で射幸心をあおる」が国の反対理由の一つだったというから、67年後に政権が旗を振ってカジノ解禁に至るとは誰も考えなかったろう▼いまカジノに夢を託すのは、大多数の庶民ではあるまい。世を明るくするために政治がなすべきことは他にあるはずだ。

[京都新聞 2016年12月15日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)