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仕事始め

 年々、正月気分を感じなくなるのは年齢のせいだけではあるまい。休みが短かった暦の巡りもそうだが、元日から買い物袋を提げ、コンビニのコーヒーで温まる人の姿は、日常と大差ないこの頃である▼ともかく年は改まった。歳時記を開くと、新しい心持ちで物事を始める言葉が並ぶ。新品の包丁、まな板を使ったという俎(まないた)始や初炊(かし)ぎ、初手水(ちょうず)に初鏡で身なりを整え、誓いの書き初めに日記初と、数えればきりがない▼さて仕事も、といきたいところだが、俳人・小説家の故石塚友二さんの<越年の負目の仕事始めなる>の句にうなった。なかなか心機一転といかないのも世の常である▼年頭会見で「新しい国造り」をうたった安倍晋三首相の心中もそうではないか。地方創生、1億総活躍、働き方改革と次々に風呂敷を広げてきたが、こなせぬ宿題がたまる一方だ▼頼みの綱は金看板のアベノミクスだが、京滋の主要企業に新年の日本経済を左右する要素を聞くと「アベノミクス」は21%と期待薄で、「トランプ大統領就任後の米国経済」が実に67%に上った▼きょうから寒の入り。この先、世界は保護主義、排外主義に傾くのか、過熱気味の相場の行方は…。「大寒」とも重なる20日の就任で、越年の不安が現実化することに誰もが身構える仕事始めである。

[京都新聞 2017年01月05日掲載]

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