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祇園暴走事故5年

 夢よもう一度-と2025年の大阪万博誘致が動きだしたが、あの夢の中に来場者がミニカーを操る「交通ゲーム」があったのを覚えているだろうか▼期間中25万人が体験した自動車館の目玉で、コンピューター制御により縦横に行き交う車が衝突しない未来交通システムとされた。その年、交通事故死者数が史上最悪の1万6千人超に上る「交通戦争」の渦中、自動車業界の汚名返上へのアピールだった▼あれから47年。車の安全性能の向上や取り締まり強化などで昨年の死者は3904人に減ったが、それ以外もけが、後遺症など何倍、何十倍もの悲劇がある。「人類の進歩と調和」を掲げた万博の夢はいまだ遠い▼京都・祇園で花見客ら19人が死傷した暴走事故からきょうで5年になる。現場の安全設備や規制が強化されたが、一瞬にして命を絶たれ、大切な人や日常生活を失った人の無念、悲しみが消えることはない▼それどころか繁華街や通学中の列に突っ込み、「走る凶器」の恐怖を思い出させる惨事が後を絶たない。認知、運動機能が低下した高齢ドライバーの事故も相次ぐ▼普通の人が、見ず知らずの何の落ち度もない大勢の命を奪い、自らの人生も壊す。それが運転者であると改めて胸に刻み、周りや社会全体で悪夢を封じていかねばならない。

[京都新聞 2017年04月12日掲載]

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