凡語 京都新聞トップへ

共謀罪法案可決

 その国では、人々は朝、目覚めたら夢を役所に届けることになっている。自分で書いて提出してもよいし、聞き取ってくれる担当者も各地に配置されている▼夢は首都にある本庁に集められる。国家の存亡にかかわる「危ない」夢を選び出すためだ。役所には「選別室」「解釈室」がある。危険な夢を見たと判断されれば逮捕され「監禁室」で取り調べを受け処罰される▼もちろん現実の話ではない。ノーベル賞候補としても知られるアルバニアの作家イスマイル・カダレ氏が小説「夢宮殿」で描いた世界だ▼アルバニアは第2次大戦後、独裁者による支配が1989年まで続いた。言論も厳しく統制された。カダレ氏はそんな社会の不条理を、国が人びとの無意識にまで手を伸ばす監視社会の寓話(ぐうわ)で描いた▼「共謀罪」法案が衆院法務委員会で可決された。犯罪が行われていなくても、計画しただけで処罰できるようになる。だが、警察は計画をどうつかむのだろうか。犯罪を夢見たり語り合うことと、実際に計画することを区別できるのだろうか▼結局は、盗聴や監視の制限を大幅に緩和することにつながるのではないか。国会で政府は否定しているが、メールやLINEなども監視の対象になりかねない。国はすでに夢宮殿を手に入れつつあるのではないか。

[京都新聞 2017年05月20日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)