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旧石器時代の風葬

 戦前、パリで活動していた芸術家の岡本太郎さんは、洗練された日本文化というものに感興を示さなかった。衝撃を受けたのは、真逆の縄文式土器である▼生命の根源から湧き出たようにうねる文様が、1970年の大阪万博に登場した「太陽の塔」に結実したことは衆目の一致するところだろう▼岡本さんの視線は沖縄県の島々にも向けられた。本島の南東に位置する久高(くだか)島は、琉球の神が降臨し、国造りを始めた聖地として知られる。50年以上前に訪れ、「はるか暗闇の祖先から、ここに死体は遺棄されてきた」(「沖縄文化論」中央公論新社)と、「風葬」の現場を紹介した▼その風葬によってあの世に旅立った可能性のある旧石器時代の人骨が先日、同県内の石垣島の洞穴遺跡にあったと発表された。ほぼ全身が残る中では国内最古、約2万7千年前のものだという▼骨の様子は風葬の遺骨と似ていたそうだ。膝を折り曲げた屈葬の状態で、胎児の姿勢にして転生を願ったとも考えられている。「暗闇の祖先」が突然現れたのだから、驚くしかあるまい▼取り巻く環境は変わったが、人類はあまり進歩していないのかもしれない。岡本さんは、性急に焼かれたり埋められるより、悠久の時間の中にさらされて消えてゆくのは正しい気がする、と書いている。

[京都新聞 2017年05月30日掲載]

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