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高等研

 何を研究すべきかを研究する研究所と言えば、まるで禅問答だが、実は身近にある。関西文化学術研究都市の中核機関の一つ、国際高等研究所(木津川市)のことだ▼何を研究すべきかは時代とともに変わる。設立30年を過ぎた2015年に高等研は「21世紀地球社会における科学技術のあり方」など四つのテーマを設定し、いま何をすべきかを中間報告にまとめて先月発表した▼内容は多岐にわたる。科学者については「人間社会が直面する課題に社会の一員として向かう役割がある」とし、社会に指針を与える人文・社会科学がたこつぼ化して社会に語り掛けていない現状を指摘した▼高等研は世界トップの科学者を集めたプリンストン高等研究所(米国)をモデルとしており、所長の長尾真・元京都大総長は「しゃば(俗世)のことはしない研究所だった」と話す▼近年は人工知能(AI)の研究会などで存在感を示すが、以前は社会へのアピールは限られ、学研都市の停滞イメージにつながっていた▼副所長の位田隆一・滋賀大学長は「報告で終わらせず、現実社会につなぐことができるか。議論を巻き起こせなければだめだ」と力を込める。各所でくすぶっている議論をネットワーク化し社会を動かすのは大変だが、それこそが高等研に期待されている。

[京都新聞 2017年07月10日掲載]

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