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城屋の揚松明

 炎が夜空にアーチを描き飛び交う。京都市左京区の花背松上げなどで知られる柱松形式の行事。京都府内では南丹市など各地にも伝わり、8月に営まれる▼愛宕信仰と関わるとされ、地域によって松上げや上げ松などと呼ばれる。舞鶴市では14日夜に城屋地区の雨引神社で「城屋の揚松明(あげたいまつ)」が行われ、山あいの里が見物客でにぎわう▼雨乞いの習俗と合わさったのが特徴だ。市を代表するお盆行事の一つで高村薫さんの小説「神の火」にも登場する。大松明は長さ約16メートルの丸太の先端に麻の茎をすり鉢状に束ねた「ハチ」を取り付け、境内に立てられる。若者が火をともした松明を投げて点火を競う▼ただし準備は大変だ。朝早くから当番の氏子が作業に当たる。住民が多かった時代は滑車を使って人力で大松明を立てていたが、現在はクレーンを利用する。関係者は「昔の技術を知る人がいなくなっている」と心配する▼府文化財保護課に聞くと、行事を担う地域から材料や人手の確保に苦労し、続けることが厳しいとの声が上がるという。勇壮な祭りへ人口減少や高齢化の波が確実に押し寄せる▼高村さんは小説で城屋の揚松明を「舞鶴で一番美しい祭り」と紹介する。今夜、繰り広げられる炎の祭典。楽しみながらも継承へのたゆまぬ努力や工夫を感じたい。

[京都新聞 2017年08月14日掲載]

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