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羽生永世7冠

 羽生善治さんによれば、将棋の指し手を決める大事な要素の一つに、型の美しさがあるという。陣形の伸びやかさやバランス、手順の流れの美しさなどだ▼一つ間違えると収拾がつかなくなるもろさもあるが、うまく作り出せれば強さを兼ね備えたものになると自著「迷いながら、強くなる」(知的生きかた文庫)に書いている▼理詰めの世界に息づく美的感覚は一編の詩に例えられることもある。他の棋士からは「乱調の中に美を見つける天才」とも評され、「羽生マジック」と呼ばれる棋風にもつながった▼47歳となり年齢的な衰えがささやかれる中、プレッシャーを力に変えて通算7期目の竜王を獲得、史上初の「永世7冠」を成し遂げた。六つの永世称号を得てから9年目の快挙である▼この間、将棋界は人工知能(AI)の挑戦を受け、プロ棋士間でコンピューターソフトでの研究も進んだ。将棋の戦術の賞味期間は短くなり、「これまでの経験や知識が生かしにくい状況」になったと羽生さんは感じている▼コンピューターの考えた手について、人間の美的センスに合わずに切り捨ててきたものが多いという。逆に言えば人間がどんな手を考えてこなかったかを教えられる、と。来年は通算タイトル獲得で大台の100期がかかる。ファンの夢は続く。

[京都新聞 2017年12月07日掲載]

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