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高御座

 大道で人々の耳目を集め、滑稽な話をしては、お代をもらう。落語の初期の一形態だ。客が見やすいように高いところに座る。これが、今の「高座」につながったとされる▼「御」の字を加えて「高御座(たかみくら)」とすると、たちまちやんごとなきものとなる。来年10月、新天皇陛下の即位の礼で使われる玉座だ。先日、京都御所で報道陣に公開された▼旧皇室典範などにより、大正、昭和の即位の礼は京都であった。このため京都で保管されるが、平成からは皇居で行われるので新皇后さまの「御帳台(みちょうだい)」と東京に移送される。公開はその前に周知を図ったのだろう▼前回の移送は物々しかった。何しろ現人神(あらひとがみ)の目印との見方も残る。過激派が爆破を予告。政教分離に反するとして経費支出に対する違憲訴訟もあり、陸上自衛隊が大型ヘリコプターで空輸した▼今回、宮内庁は民間業者が陸路で運べると判断した。不謹慎かもしれないが、拍子抜けの感がある。象徴天皇制が世間に根付いている証しともいえよう▼昭和天皇の御前落語で三遊亭円生さんは「舞台をもっと高く」と求め、受け入れられた。陛下は見上げるのを気にせず笑っていたそうだ。この話を思い出すと、高御座も高座とあまり違わない気がしてくる。静かで簡素な代替わりを支える道具となってほしい。

[京都新聞 2018年04月20日掲載]

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