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ハレとケ

 京の中心部は今月、表情を変える。1カ月にわたる祇園祭である。吉符入りの神事を機に、山鉾町は「ケ」から「ハレ」へと移る▼日常のケと非日常のハレ、対比は興味深い。伯牙山のお飾り所になる杉本家には、江戸期の暮らしの備忘録「歳中覚(さいちゅうおぼえ)」が残る。ケの日は朝夕茶漬け、昼は一汁一菜とつましいが、宵山には鮎(あゆ)すしか鯖(さば)ずしでもてなした(杉本節子さん著「京町家のしきたり」)▼「町がそのままハレの舞台になる」。こう話したのは文化人類学者の故米山俊直さんだ。四条室町は「鉾の辻」に変わり、10トン以上ある巨大な鉾が建ち並ぶ。屏風(びょうぶ)祭も旧家が秘蔵の品を美しく飾り付け、大衆の目を奪う…▼こちらの2人も晴れ舞台だったのだろう。首脳として初めて会談したトランプ米大統領と、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長である▼共同声明では、朝鮮半島の完全な非核化と北朝鮮の体制保証を確約。不透明な内容で政治ショーとの見方もあったが、米国は8月の米韓合同軍事演習の中止を発表した。隣国の思惑も交わり、実務協議の行方が注目される▼ハレの象徴の祭りは神仏と交感し、自らを真摯(し)に省みる機会でもあると聞く。2人が過去の対立をどう浮かべたかは分からないが、ハレは平穏な日常があってこそ。ののしり合いはもうご勘弁を。

[京都新聞 2018年07月02日掲載]

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