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死刑制度

 正直に書くと、一瞬、気持ちが波打った。オウム真理教の元幹部7人の死刑が執行された。一報に触れ、そう感じた▼1980年代、教団は京都の大学で頻繁に勧誘を行っていた。7人にも京で学んだ人がいる。街角ですれ違っていたかもしれない。何が彼我の道を分け、彼らを刑場に導いたのか▼犯罪を擁護するつもりはない。ただ、国家の名の下に人を絶命させる行為が、1日に7回も行われた。是非は別として、その事実の重さに身震いした人は、少なくないと思う▼欧州連合(EU)やドイツなどが執行を残虐で非人道的と批判する声明を出した。先進国で死刑があるのは日本と米国の一部州だけだ。韓国も10年以上、執行していない▼日本の死刑支持率は8割といわれる。一方で死刑の実態はほとんど知らされていない。死刑囚は外部との通信を厳しく制限され、刑場の公開も過去に一度きり。非公開との法律はないのにである▼フリージャーナリストの青木理さんは著書「絞首刑」(講談社)に死刑判決が確定する直前の男性が涙する、極めてまれな写真を掲載した。接見でひそかに撮影した。青木さんは話す。「私たちは死刑と死刑囚の実相を隠され、議論の材料を奪われている。でも死刑を是認する。それでいいのか」。重い問いかけではないか。

[京都新聞 2018年07月10日掲載]

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