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ダムの限界

 コップに水を注ぐと、いずれ満杯になり、注いだ分だけあふれてくる。この当たり前のことが、大規模な形で西日本各地で起きた。豪雨によるダムの放流である▼八つのダムが満杯に近づき、流入した水と同じ量を下流に流す異例の操作が行われた。川にダムがないのと同じになるわけで、治水機能としては「お手上げ」の状態といえる▼愛媛県の肱川(ひじかわ)では野村ダムなどがこの操作を実施。下流の西予市で水があふれて大規模な浸水被害が起き、5人が亡くなった。ダム放流が水害を招いたとの批判は強い▼八つのダムには桂川上流の日吉ダム(南丹市)も含まれる。1998年の供用開始以来、初めて非常用ゲートを開け、基準の約6倍に当たる毎秒907トンを流した▼日吉ダム管理所の担当者は「被害が出ないのを祈りながら操作した」と振り返る。桂川下流が決壊すれば、京都市南部や乙訓地域では2階屋根が水没するほどの浸水も想定される。京都が大被害を免れたのは、たまたま雨がやんでくれたという天恵にほかならない▼ダムは川の水位を直接下げるので治水効果は確実だが、容量には限界がある。台風シーズンはこれから本番。「ダムは万能ではない」(日吉ダム管理所担当者)ことを肝に銘じ、水害に強いまちづくりや避難の在り方を考えたい。

[京都新聞 2018年07月22日掲載]

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