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街の見巧者

 集合後、思い思いに地域を歩く。喫茶店や飲み屋のはしごで会話を楽しむ人、街の成り立ちを調べたり路地裏を巡ったりする人…。1時間半後に再び集まり、見聞や体験を語り合いリポートにまとめる▼街歩きイベント「ウオーキン・アバウト」。演劇制作をはじめ文化振興の仕事に長年携わる大阪ガス・都市魅力研究室長の山納洋さんが4年前から「街の見巧者(みごうしゃ)を増やしたい」と参加者を募り、近畿57の街で催してきた▼見巧者は芝居で、演技の良しあしを見分けられる目の肥えた観客。舞台の質を支えるのに欠かせない存在だ▼登場人物のつぶやきや立ち居振る舞いに触れるように街を巡り、人々がどんな暮らしを営み地元へ愛着を深めてきたかに思いをはせる。中でも、小さな商店の歩みに参加者は注目する▼年配の女性が営む和歌山市の花屋は1人暮らしのお年寄りが椅子付きカートを押して集う場となり、今はコーヒーや冷菓も扱う。京都市の四条木屋町近くのコンビニは氷屋として創業し、一帯の飲食店向けに特化して増やしてきた品ぞろえが人気だ▼住民の思いや変化に敏感に応じる商いが豊かにある街ほど「人々が使いこなしている」と山納さん。大規模な開発だけではない。暮らす人、訪れる人の視線に磨かれる小さな変化も街を動かしていく。

[京都新聞 2018年09月18日掲載]

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