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錦市場と観光化

 串刺し団子を手にする人を表現した絵文字に赤い斜線を引いた駒札風の掲示が、京都市中京区の錦市場に示されている。訪日観光客の増加に伴い問題となっている「食べ歩き」の抑制を、同商店街振興組合が訴えるためだ▼通勤ラッシュ並みに混雑する市場を歩くと、食べ終わった串を店頭のごみ箱へ入れず路上に捨て、ソフトクリームを手に衣類を品定めしようとして店員に制止される姿が目につく▼料亭や旅館、家庭の食を長年支えてきた老舗店主らは「錦らしさを失いかねない」「地元の人に安心して買い物してもらえない」と危機感を募らせる▼組合はごみ箱の設置など大学の協力を得ながら有効な対策を模索しているが、組合だけで解決できる範囲を超えている。他の観光地から進出した土産物店やドラッグストアが客の増加に拍車をかける▼亀岡市在住の東洋文化研究者アレックス・カーさんは近著「観光亡国論」(中央公論新社刊)で、錦市場について「商店街が観光地化されることで、それまでの町とは関係のない業者や商品が入ってきて、地域全体の文化や個性が消えてしまう」と懸念する▼京都の主要観光地は受け入れの限界を、超えている。どう分散させ、制御していくのか。住民の生活と文化を守る観点から、まちづくりの再考が必要だ。

[京都新聞 2019年03月24日掲載]

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