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あおり運転

 閑散としたハイウエー。のろのろ運転の大型トレーラーが車に追い越される。すると急加速し、執拗(しつよう)に追いかけてくる▼「誰、なぜ」。姿の見えない運転手に狙われるドライバーの恐怖を描いたのが洋画「激突!」。スティーブン・スピルバーグ監督初期の傑作とされる▼割り込みや幅寄せ、まぶしいハイビーム、激しいクラクション。怖がらせたいのか、暇つぶしなのか、心情は不明だ。だが、こんな危険極まりない行為にブレーキの利かない人が後を絶たない▼東名高速道路のあおり運転による夫婦死亡事故の判決がきのうあった。横浜地裁は危険運転致死傷罪を適用し、被告の男に懲役18年を言い渡した。駐車マナーへの注意に逆上した短絡的な犯行だった。負傷した長女の「みんなで死んでしまえば良かったと何度も思った」との言葉が胸を突き刺す。家族の未来を閉ざした罪の深さを改めて知る▼今年1~6月、あおり運転を含め車間距離不保持で摘発されたのは約6千件。自衛のためドライブレコーダー装備も進むが基本は安全運転だ。師走は慌ただしく交通量も増す。焦らず、怒らず…譲り合いを肝に銘じてハンドルを握ろう▼そう言えば「激突!」が公開された1973年に世に出た標語はこれだった。「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く」

[京都新聞 2018年12月15日掲載]

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