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10. 里の営み

雪化粧した芦生地区の須後の里を由良川が流れる。かつて木炭を供給した里山の雑木林は里の営みに合わせ、スギの人工林に姿を変えた(1月7日、南丹市美山町)
雪化粧した芦生地区の須後の里を由良川が流れる。かつて木炭を供給した里山の雑木林は里の営みに合わせ、スギの人工林に姿を変えた(1月7日、南丹市美山町)
 鈍色(にびいろ)の空から大粒の雪が降る。山里は白いベールに覆われる。

 南丹市美山町の芦生地区。標高350メートルの里の暮らしはこの時期、厳しい自然にさらされる。1メートルを超える積雪。里人は除雪に追われていた。
 古老の中野良雄さん(81)を訪ねた。トチモチづくりに精が出る。地区の99%が森林という環境。生活の糧は昔から自然の中にあった。
 かつては木炭生産が盛んだった。しかし1960年代の燃料革命でその営みも変わる。エネルギー源は炭やまきから石油、電気、ガスになった。
 由良川最上流の集落だった灰野はそんな時代に廃村となった。芦生地区の須後から約2キロ。山仕事に従事した人々が住んだ。中野さんも灰野出身だ。「山菜採りや魚釣り、冬は炭焼きをした」と懐かしむ。夏は伝統行事「松上げ」もあった。
 仕事が減るなかで電気が供給されなかったため、61年に最後の住民が離村した。
 製炭が衰退すると、木炭の供給源だった雑木林はスギやヒノキの針葉樹林に取って代わられた。地区の奥に広がる京都大芦生研究林でも伐採、造林が行われた。天然林を囲むように人工林が増え、山並みは一変した。
 今、増えすぎた人工林は荒れている。切っても採算が取れない。中野さんの長男良美さん(47)も林業に就いたが、地元での作業はほとんどない。「10年先はどうなるか」と未来を憂う。
 変遷をたどった山仕事。高齢化の進む里に次の世代の担い手はまだいない。(写真映像部 山本陽平)
トチモチづくりにいそしむ中野さん夫婦。皮をむいたトチの実をまきストーブの横で乾燥させる。昔ながらの生活を続けている(1月20日、南丹市美山町)
トチモチづくりにいそしむ中野さん夫婦。皮をむいたトチの実をまきストーブの横で乾燥させる。昔ながらの生活を続けている(1月20日、南丹市美山町)
里に姿を見せた冬鳥のルリビタキ。雪が積もったヌルデの枝に木の実を求めてやってきた(1月21日、南丹市美山町)
里に姿を見せた冬鳥のルリビタキ。雪が積もったヌルデの枝に木の実を求めてやってきた(1月21日、南丹市美山町)
灰野には今も神社が残る。廃村から半世紀になっても中野さんは参拝を続け、宮の守をする。集落は江戸時代に派遣された山の番人が定住してできた。同じころ、さらに上流に木地師の村があったという(3月12日、南丹市美山町)
灰野には今も神社が残る。廃村から半世紀になっても中野さんは参拝を続け、宮の守をする。集落は江戸時代に派遣された山の番人が定住してできた。同じころ、さらに上流に木地師の村があったという(3月12日、南丹市美山町)
深い雪に覆われた集落。屋根に降り積もった雪を下ろす住民(1月18日、南丹市美山町)
深い雪に覆われた集落。屋根に降り積もった雪を下ろす住民(1月18日、南丹市美山町)
除雪作業に追われる集落の古老(1月7日、南丹市美山町)
除雪作業に追われる集落の古老(1月7日、南丹市美山町)
吹雪の中で羽ばたくマヒワの群れ(1月7日、南丹市美山町)
吹雪の中で羽ばたくマヒワの群れ(1月7日、南丹市美山町)
住民の働く場として設立され、山菜加工や販売を手がける有限会社「芦生の里」の工場では冬の間も作業が続けられる(1月21日、南丹市美山町)
住民の働く場として設立され、山菜加工や販売を手がける有限会社「芦生の里」の工場では冬の間も作業が続けられる(1月21日、南丹市美山町)

【2011年01月29日掲載】