京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ > 華包(はなつつみ)
インデックス

(11)菊包

京都華包研究会 笹岡隆甫
菊包の折形図 「菊包」(遠州六世貞松斎米一馬筆「華包」より)
菊包の折形図 「菊包」(遠州六世貞松斎米一馬筆「華包」より)


幅広く愛される重陽の花


 日本には奈良時代以降に伝わったとみられ、平安時代には陰暦9月を「菊月」と呼び、重陽の節句には、邪気をはらい長寿を願って、菊を飾ったり、菊酒を酌み交わしたりした。吉祥文様として多用され、秋を象徴する花となっている。





 9月は、菊の季節。様々(さまざま)な菊が入手できる時季ですから、華包にも五色の菊を入れてみました。

 江戸時代のいけばなの独学書『生花早満奈飛(いけばなはやまなび)』には「九月節句の花は菊の五色を入れるべし」とあり、9月9日の重陽(ちょうよう)の花として、五色を意識した菊の生け方が伝えられています。

 五色とは、万物を構成する五つの元素である木火土金水(もっかどごんすい)(五行(ごぎょう))の色で、順に青赤黄白黒。青々とした菊の葉を青、水の色を黒とみなし、花は赤黄白の三色を用います。菊は昔から園芸には欠かせない花で、大名から庶民に至るまで幅広い層に愛され、品種も多かったため、このような風雅な生け方が考案されたのでしょう。

 普段、華包では、2枚の和紙を合わせて折りますが、今回は3枚の和紙を用いたアレンジにも挑戦しました。3枚のかさねの色目が際立つように、中心に挿し色の紅を入れ、1ミリずつずらして折りました。飾り水引の代わりに、クリスタルの帯留(おびどめ)をあしらい、全体を涼やかに引き締めています。


京都華包研究会 笹岡隆甫 (ささおか・りゅうほ)

 1974年京都市生まれ。華道未生流笹岡家元。京都華包研究会同人。

違い棚にすっきりと。秋の気配を運ぶ(京都市左京区・未生流笹岡家元) 和紙を3枚重ねてアレンジ。着物の重ね襟のように、間の紅色が印象的に。水引に代えて、クリスタルの帯留で締めた
違い棚にすっきりと。秋の気配を運ぶ(京都市左京区・未生流笹岡家元)
花材=露地菊、小菊
和紙を3枚重ねてアレンジ。着物の重ね襟のように、間の紅色が印象的に。水引に代えて、クリスタルの帯留で締めた
花材=露地菊

【2018年09月14日付京都新聞夕刊掲載】