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第十四景 膳所の新生

改装、動画配信に若い感性

 昨年11月17日、大津市のJR膳所駅近くにある都湯に2年ぶりにのれんが掛かった。店主の逝去により休業していた銭湯を、京都市内で「サウナの梅湯」を経営する湊雄祐さん(28)が借り受け、再開させた。

 「2015年から経営しているサウナの梅湯が軌道に乗り、早く2軒目をやりたいと思っていました。銭湯が急速に減っている地方で、成功モデルを作りたいという願望もありました」と湊さん。

 出身地の浜松市では銭湯が2軒にまで減っているそう。学生時代に地方を旅しながら訪ねた銭湯の良さを残していきたいとの思いもあり、普段は銭湯活動家・湊三次郎を名乗っている。

レトロな雰囲気を生かした玄関。外から中が見え安心感を生んでいる
レトロな雰囲気を生かした玄関。外から中が見え安心感を生んでいる

 再開にあたっては約700万円かけて、番台から脱衣所が見えないフロント方式に改め、廃材をたく釜を新調するなどした。利用したことがない人が不安を抱かないよう玄関を透明なガラス戸に変えるなど、サウナの梅湯で得たノウハウも生かされている。

ユーチューブ配信用の動画を撮影する原さん(左)と湊さん=大津市馬場3丁目・都湯
ユーチューブ配信用の動画を撮影する原さん(左)と湊さん=大津市馬場3丁目・都湯

 一方で新しい試みも。都湯のメインスタッフである原俊樹さん(34)は以前、映像や効果音の仕事をしていた経験を生かし、週に2回、銭湯の魅力や裏側を数分間の動画に編集し、「ゆとなみTV」のチャンネル名でユーチューブ上に配信している。

 「チャンネル登録者が1000人を超えるなどの条件をクリアすれば、広告収入を得ることができます。始めて1カ月ほどですが、現在までに約600人に登録してもらっています」と原さん。今後、収益源になれば、銭湯業界では初となる試みだ。

浴室には壁新聞も。お客さんとのコミュニケーションツールにもなっている
浴室には壁新聞も。お客さんとのコミュニケーションツールにもなっている

 都湯ではツイッターとインスタグラムも広報ツールとして利用するが、SNS(会員制交流サイト)は、銭湯業界を大きく変えた。全国の元気な銭湯がインターネット上でつながり、情報を共有するなど地域を超えた交流が盛んになった。銭湯経営者のモチベーション向上にもなっているように思う。

 このお正月、都湯のこぢんまりとした浴室は、新生都湯の船出を喜ぶ多くの人でにぎわっていた。

都湯

大津市馬場3丁目12
090(3820)1126
午後3時~12時営業
木曜定休
駐車場4台

林宏樹(はやし・ひろき)

林宏樹さん

 フリーライター、銭湯コラムニスト。1969年京都市生まれ。東京で見かけた富士山のペンキ絵が地元にはないのかという疑問から、京都府、滋賀県の現存する銭湯すべてに入浴。著書に「京都極楽銭湯案内」「京都極楽銭湯読本」(淡交社)など。

【2019年01月21日掲載】