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(16)鉄刃木という木

重く堅い選ばれし銘木
重く、堅い鉄刀木。削った時にあらわれる、紫を帯びた黒褐色の縞柄杢目が美しい(京都市中京区千本通三条下ル・銘木店)
 「鉄刀木」と書いて「タガヤサン」と読む。
 なかなか読める方はいないでしょう。この読み方は、フイリピン語の「Tambulian」(タンブリアン)がなまったという説が有力なのですが、実はフィリピンでは採れない。産地は、ミャンマーやタイなどで、輸入の歴史の名残なのかもしれません。
 「紫檀、黒檀(したんこくたん)、鉄刀木」は「唐木」の三大横綱。唐木の歴史は奈良時代の唐との交易により始まった。鮮やかな唐木工芸は今も正倉院の宝物の中にたくさん所蔵されている。ならば、昔から多用されていたようなのだが、めったにお目にかかることがない。銘木の世界では、高額商品ともいえる鉄刀木、その理由は、木の性質に隠されている。
 鉄刀木は、成長が早いときくが、外側ばかり成長し、肝心な心材(赤身の部分)の成長が極端に遅い。心材が無いまま枯死することもあるという。また、恐ろしく重く堅い木で、製材すると何度も刃を目立てしないといけない。乾燥にもかなりの時間を要する。
 写真の鉄刀木は、亀岡市のT材木店からお預かりしたもので、長さ四メートル、三人の男性でやっと運べる重さだ。ひとたび表面を削ると、黒灰色の表面が空気に触れ、紫がかった黒褐色になっていく。表れた杢(もく)目は、流れる雲の如(ごと)く、縞(しま)柄を描いている。小割れを生じやすいので職人は片時も離れず仕上げなくてはならない。目利きだった祖父が「選ばれし銘木・天然鉄刀木は人をも選ぶ」とたとえたように、希少な木に出逢えた喜びを忘れずにいたいと思う。

【2003年7月29日掲載】