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プレカリアート

欧州発祥 日本でも増加
  最近、「プレカリアート」という言葉を新聞や雑誌で目にしますが、その意味は。
 A プロレタリアート(労働者階級)と英語のプレカリティなど、「不安定性」を意味する言葉をくっつけた造語で、不安定な雇用・労働状況に置かれた人たちを指します。
  この言葉はいつ誕生したのですか。
 A 最初に登場したのは、二〇〇三年のイタリアのようです。この国のカトリック暦では毎日が特定の聖人に当てられている(バレンタインデーもその一つ)のですが、翌〇四年二月二十九日(二月二十九日は四年に一度しか回ってきません)を、不安定な労働者とその生活の守護聖人「聖プレカリオ」の日とし、カーニバル風のパフォーマンスを繰り広げたのです。その後、「プレカリアート」の言葉はヨーロッパ各地に広がっていきます。
  日本で使われ出すのは。
  〇六年四月三十日、フリーターの若者らによって東京・新宿で行われた「自由と生存のメーデー」で、自らを「プレカリアート」と称したことで知られるようになった、とされています。音楽に合わせて踊りながらシュプレヒコールを上げる「サウンドデモ」を繰り広げる手法は、イタリアのカーニバル風のパフォーマンスと相通じる所があるようです。
  どういう人たちが含まれるのでしょうか。
  フリーターや契約社員、派遣社員ら非正規労働者、失業者のほか、厳しい状況にさらされた自営業者、農家、職人らも入るかもしれません。大学の非常勤講師ら高学歴でありながら安定した職を持たない人たちも、ヨーロッパでは明確に「プレカリアート」に位置づけられています。
  日本でも定着しつつある背景にあるものは。
  グローバリゼーションが進展する中、企業は競争を勝ち抜くため、正規労働者を減らし非正規労働者を増やしています。こうした傾向は、小泉前政権が推し進めた新自由主義的な「構造改革」でより顕著になりました。そして最近は、フルタイムで働いても生活保護の支給額にも満たない収入しか得られないワーキングプアの問題も生じています。
  プレカリアートという言葉は何を問い掛けているのでしょうか。
  「不安定」を統計的・実証的に定義するのはなかなか難しいものです。ただ自らの体験を基に、「プレカリアート」をテーマにした取材、執筆活動に力を入れる、一九七五年生まれの作家、雨宮(あまみや)処凛(かりん)さんが、こうした生活の「生きづらさ」を告発しているように、彼らの置かれた状況は深刻です。新しい労働の在り方や新しい労働の価値観の発見など、彼らの提起を受けて考えなければならない課題は多くあるようです。

【2007年8月23日掲載】