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グッドバイバイ・カモフラージュ

【質問】大学に失望しました

 固定観念に大きな疑問符を突き付けられています。
 私は今年、大学に進学しました。最難関と言われるエリート学生になりました。
 しかし、その実態は、理想をすら根こそぎ奪われる環境。誰も自分の言葉で語らないから、一つ一つのことは走馬燈のように感情の表面を揺らめかせるだけで、本質のところは何も見えてきません。
 核心の所は隠したまま、自分を良く見せることに誰もが長けているのです。だから、言葉を預けて意見を共有することも、お互いに協力し合うことも実現しません。

 



 私はこれまでもたくさんの人に影響を受けて、自分の悪い所も、もちろん良い所も、カモフラージュせずに表に出すために邁進していたのですが、ひた向きに、そして見事な感覚と技で取り繕う人間で大学は溢れかえっていました。尊敬できる教授もわずかな存在です。
先生、ここに何がありますか?

大学1年生女性

 




ハラダの答え

 大学生活、しかも日本国内で最難関の大学での学生生活。君は、自分でも気づかないうちに、理想を思い描いていたんだろうな。大学入試を突破するのは並大抵の努力ではなかっただろうし、その忍耐に比例して、未来への大きな期待が育っていったのだろう。成長と自己実現を共に成し遂げて行く、自由と創造力に溢れた人間関係。君は大学での新しい生活で、そんな人と人とのつながりを期待していたんじゃないかな。そして、これまでにも、そういう人間関係を体験して来たのだろう。

 偏差値は、人との関係性についての指標にはならない。多くの受験生が、高い偏差値を維持するために、人間関係を築くのに必要な時間を削ってしまう傾向すらあるのではないか、と僕は思う。人とのクリエイティブな関係は、往々にして受験勉強とは異なる場所で構築されていくものだったりする。

 学生時代、知り合った東大生と数人で食事に行って、驚かされたことがある。僕らは4人で食事をしていて、みんなでシェアしようとミンチカツを注文した。テーブルに運ばれてきたミンチカツはちょうど人数分の4個。東大生だった彼は「美味しいね」と嬉しそうに1つ目を食べて、迷わず2つ目を食べ始めた。ちょっと驚愕の遠慮のなさに、思わず軽く頭をはたいて「数かぞえろや!」と笑いながら言ったことがある。

 彼は頭をはたかれたこともなかったかもしれないな。すぐには何が問題なのか、分からなかったようだ。きっと、自分が置かれている状況を把握するとか、周囲の人の気持ちを想像するとか、そういったことに興味がなかったのだと思う。それでも、その後どんどん仲良くなった僕らは、出会った当初のこのエピソードを思い出して、よく笑い合ったものだ。

 人との関係の中で影響を受けたり影響を与えたりする為には、お互いに本当の自分をさらけ出さなければならない。それが全てではないにしても、自分を見せることで得られる成長を体験して、その成長の喜びを糧に、また自分をさらけ出す勇気をもらいながら進んで行くのだ。ミンチカツのエピソードは、僕と東大生の彼がお互いを理解し合うきっかけだったと思う。まあ、頭をはたいたのは褒められたことではないけれど。当時を振り返って、体面を取り繕うことなく付き合えたからこそ、僕らはお互いに学び合うことができたのだと思う。

 今の君の周囲は、自分を見せないことが知恵であり、相手が成長しないように工夫して自分を守るという価値観が支配的なのかもしれない。君はその価値観に従いたくなくて、でも、今の状況ではそういう生き方しか出来ないように感じて、窒息しそうな失望を感じているのだろう。

 僕からのアドバイスは「恐れずに、自分の信じる価値観をアピールしてみろ!」というものだ。そうすれば必ず、君にとってとんでもなく面白い奴に出会える。受け身になって悲観して、自分の周囲の状況を期待はずれだと嘆いている今よりは、ずっと楽しくなるはずだ。周りの空気を読みすぎてしんどくなるより、自分からどんどんメッセージを飛ばす方が潔くて気持ちいい。最初は恥ずかしくてしんどいかもしれないけどね。

 高校生を見ていると、学年にたった一人でも大声で「今年の学園祭は盛り上がろうぜ!」と能天気に発信してくれる奴がいると、それに反応して、白けたムードが打ち破られて、結果、大成功を収めたりする。ああ、たった一人でも変わるんだな、とよく思う。君と同じような失望を感じている人が、きっとすぐ隣にいると思うな。

 もちろん、大学時代は大学にコミットしないで生活を送ることもできる。自分の時間をどう過ごすか、高校生の時より自由に環境を選べる。アルバイトに明け暮れることも、学問に没頭することも可能だ。だからこそ、キャンパスで浮いていたって構わないじゃないか。何でもやってみたらいい。きっと、最後のモラトリアム時代だ。自由に、大胆に、素敵な学生生活を創造して欲しいな。

「グッドバイバイ・カモフラージュ」 作詞作曲:原田博行

歌詞

photo by かつらかづみ

バイバイカモフラージュやりたいことをやって
バイバイカモフラージュ笑いたい時に笑うよ
本当の自分でたった一人の誰かと出会えるなら本望だ
グッドバイバイ カモフラージュ
バイバイカモフラージュ言いたいことを言って
バイバイカモフラージュ泣きたい時に泣くよ
何も生まれない そんな取り繕うだけの関係なんかとはおさらばだ
グッドバイバイ カモフラージュ
グッドバイバイ 
グッドバイバイ カモフラージュ




◇       ◇       ◇

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【2018年8月31日】