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[23]コンピューターグラフィックス

立命館大情報理工学部教授 仲田晋氏
CGの作成風景

 コンピューターグラフィックス(CG)の技術が映像制作やテレビゲームで頻繁に使われていることはみなさんもご存知と思います。特にテレビゲームではCGが利用され始めてから30年ほど経過し、驚くほど高品質な映像でプレイできるようになりました。

 CGの大きな魅力の一つとして想像上の世界を臨場感のある映像として表現できることがあります。たとえば全編CGで構成されるアニメ作品では躍動感あふれる動きや大胆な演出が魅力となっていますし、実写の映画でも部分的にCGを利用することで独自の世界観の表現が可能です。日本のテレビアニメではアニメーターによる作画とCGの映像が共存するようなシーンも頻繁に登場するようになりました。

 こういったCGの映像はどのような仕組みで作られるのでしょうか。その原理は写真撮影によく似ています。部屋の中で人物を撮影する状況を想像してみましょう。カメラマンは人物に向けてカメラを構えています。照明の光が人物や壁に当たって方向を変え、部屋の中をさまざまな方向に行き交い、その一部がカメラのレンズに到達します。この光を記録するというのが写真撮影の仕組みです。

 CGもこの原理に基づいています。つまり、被写体とカメラと照明を配置して、カメラに到達する光を記録する。この過程をコンピューター上で実現するのがCGの基本的な仕組みです。特にテレビゲームではスムーズな映像を作るために1秒間に数十枚の画像が必要なので、CGは時間との戦いという側面もあります。臨場感あふれるテレビゲームの映像の背後には、短時間で高品質な映像を作るためのさまざまな工夫が隠されています。

工業、医療分野で応用期待

 CGの用途はエンターテインメント分野に限りません。工業製品の設計ではCGの技術が古くから利用されていますし、医療分野ではCTスキャンから作られる人体内部の映像を診断や治療に活かすことができます。建築や都市工学の分野でも景観の表現にCGが利用されます。

 筆者の研究グループの取り組みからCGの工業利用の例をご紹介します。一つは流体シミュレーションです。たとえば航空機やポンプといった機械は空気や水のような流体の影響を考慮して設計されます。こういった流体の運動をコンピューターで分析する流体シミュレーションは機械設計の重要な技術の一つです。ここでは機械の形をシミュレーションに正確に反映させたり、シミュレーションの結果を適切に映像化したりといった用途でCGの技術が大いに役立ちます。

 新材料の開発にCG技術を活用するという試みもあります。たとえば発泡金属と呼ばれる材料があります。これは軽石のように細かい気孔をたくさん持つ金属で、軽くて熱に強いという優れた特性を持つことから自動車や人工衛星の部品の材料としての利用が期待されています。この材料は多くの気孔を持つために形が非常に複雑で、この複雑な形をコンピューター上で表現するためにCGの技術が不可欠です。発泡金属の性質は未知の部分が多いですが、CGとシミュレーションの利用によってその材料特性が少しずつ明らかになっています。

 CGの技術はエンターテインメントの分野で長年にわたって培われ、映像としては円熟期を迎えた感もありますが、現在でも新しい技術が次々と登場しています。特に工業や医療への応用という点では発展の余地が多く残されています。今後は産業界においてCG技術のさらなる活用が期待されます。

なかた・すすむ

 1973年生まれ。2001年筑波大学大学院博士課程工学研究科修了。博士(工学)。東京工業大学大学院非常勤研究員、立命館大学理工学部専任講師、立命館大学情報理工学部准教授などを経て、2013年より現職。

【2019年02月27日掲載】