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[19]インタラクションデザイン

立命館大情報理工学部講師 松村耕平氏

 みなさんはインタラクションデザインという言葉を聞いたことがあるでしょうか。多くの人には聞き馴染みのない言葉かもしれません。しかし、多くのものにあふれるこの世界において、そのものが「どのように動くのか」を知ることは、そのものがどういう色や形をしているのかと同じように大切なことです。美しい形をしたスマートフォンでも、使いにくかったらそのスマートフォンは普段使うものとしては魅力を失います。インタラクションデザインは、ものが「どのように動くべきか」を考える分野であり、また、その行為を表す言葉です。

 米アップルのiPhone(アイフォーン)を例に取りましょう。日本でも多くの人が使っているこのスマートフォンが人々に受け入れられたのはなぜでしょうか。同じように直接タッチできる画面を備え、インターネットに接続できる機能を持ったものはいくらでもあります。そのなかでアイフォーンが受け入れられたのは、例えば開発者たちが、画面を通して直接対象を操作することができるダイレクトマニピュレーションという考え方を理解し、スマートフォンを使う人が操作を通して意図を表現できるためのインタラクションデザインを実現したためだと考えられます。

 逆に、インタラクションデザインを考え直さなくてはならないものもあります。私には、バス停で時間になってもバスが来ないときに、「もう行ってしまったのか、あるいは、まだ到着していないのかわからない」という経験や、「買いたいものは目の前に見えているけれど、どうやって買えば良いのかわからない自動販売機と格闘する」という経験があります。このように、やりたいことを実現するための方法がわからないのは大きなストレスになります。

利用者の要求、かなえる動き

自動車の窓を通して乗員が周りの風景と関わり合うためのシステム
自動車の窓を通して乗員が周りの風景と関わり合うためのシステム

 インタラクションデザインという言葉はIDEOというデザインコンサルタント会社を設立したビル・モグリッジというデザイナーによって1990年に作られました。この分野はデザイナー、研究者、利用者としての私たちによって、たとえその言葉そのものについては知らなくても、発展を続けています。インタラクションデザインの方法論としては、ユーザ中心デザイン、行為中心デザイン、システム中心デザイン、そして経験者によるデザインという四つのアプローチに分類されます。それぞれ、利用者(ユーザ)がなにを望んでいるのか、どのような行為が営まれているのか、どのようなシステム構成なのか、デザイナーの技能や知恵、に注目してデザインを行います。これらは排他的な存在ではありません。インタラクションのデザインのためには、これらを柔軟に組み合わせることが必要です。

 図は私が研究している、自動車の窓を通して乗員が周りの風景と関わり合うためのシステムです。このシステムを用いることで、普段は見逃していた周りの風景と柔軟に関わり合うことができます。例えば、周りの風景のなかに「あ、あれなんだろう?」と思うものがあっても自動車は動き続けているために見逃してしまう経験があります。そのようなときに、風景を遡って調べることができます。このシステムの設計のために、行為の観察として自動車の乗員が普段どのように周りの風景と関わり合いを持っているのかを調査しました。また、このシステムを使ったときに利用者がどのような要求を持つのかを分析して、システムを改良していきました。このように調査↓分析↓実装のサイクルを何度も繰り返すところもインタラクションデザインの方法論において特徴的なところです。

 私が専門とするヒューマンコンピューターインタラクションという分野では、コンピューターを含む人工物におけるインタラクションデザインについて研究しています。立命館大学メディアエクスペリエンスデザイン研究室でも、私たちの身の回りの問題を情報技術によって解決するためにインタラクションデザインの手法を取り入れて研究を進めています。

まつむら・こうへい

 1983年生まれ。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士後期課程修了。博士(知識科学)。ヒューマンコンピュータインタラクション、身体性認知科学などの研究に従事。2014年より立命館大学情報理工学部助教、2018年より同講師。身の回りを少しでも楽しくするPlayfulの精神で研究・教育を実践。

【2018年10月24日掲載】