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京都大公共政策大学院教授 岩下直行氏

仮想通貨決済は虚構
岩下直行氏
いわした・なおゆき 慶應義塾大経済学部卒。1984年日本銀行入行。金融高度化センター長、フィンテックセンター長などを歴任。2017年に日銀を退職し、京都大公共政策大学院教授に就任した。金融庁参与。栃木県出身。55歳。

 仮想通貨が注目を集めている。価格変動が大きく、売買も手軽なため多くの投資家を集める一方、1月には交換業者のコインチェック(東京)が不正アクセスを受けて巨額の仮想通貨が流出した。日銀で電子通貨を研究した京都大公共政策大学院の岩下直行教授に、今回の騒動や仮想通貨の未来について聞いた。

 -仮想通貨をどう見ているか。
 「仮想通貨のファンダメンタルバリュー(基礎的価値)はゼロだ。持っていても配当金はないし、金利も得られない。実体がないデータなので消失しても不思議ではないが、高値で売れるという根拠のない期待に支えられている。先進国の金融緩和に伴う余剰マネーの一部が流れたことも価格上昇の一因だ」

 -決済手段にはなり得ないのか。
 「決済に使えると宣伝することで交換業者は『未来のお金』というイメージを振りまくことに成功した。だが利用者はごく少数で、業者は使用時のレートに基づき、後から円で入金している。これは仮想通貨の決済とは言えない。資金決済や給料も仮想通貨になるという主張は虚構だ」

 -仮想通貨「NEM(ネム)」の流出騒動は何をもたらしたか。
 「(複数のコンピューターで取引を監視する)『ブロックチェーン』の技術により仮想通貨の取引は安全で、顧客も保護されるという説明は、お題目に過ぎないということだ。交換業者は地方銀行よりはるかに大きな預かり資産を持ちながらまともに規制されず、丼勘定でシステムを運用していたことが白日の下にさらされた」

 「私は日銀時代に仮想通貨のようなデジタルマネー(電子通貨)が現在の銀行券の代替にならないか真剣に考えた。今や世界の中央銀行で電子通貨が研究されている。ただ先進国では既存の金融システムを壊してしまいかねない懸念もある」

 -現金を使わないキャッシュレス決済が世界で広がっている。
 「現金を使い続ける限り店はお釣りを用意せねばならず、現金輸送の警備費用もかかるので社会の損失だ。日本の金融機関は伝票などのペーパーレスと印鑑レスも急ぐ必要がある。でないとキャッシュレス時代に銀行が金融の主役であり続けるのは難しく、ノンバンクやIT大手が取って代わるかもしれない」

【2018年03月22日掲載】