京都新聞TOP > 経済特集アーカイブ > この人に聞く
インデックス

三洋化成工業社長 安藤孝夫氏

「ニッチ」にシフトへ
安藤孝夫氏
あんどう・たかお 大阪大工学研究科修了。1977年、三洋化成工業入社。98年に取締役に就任し、研究本部長、国際事業推進本部長などを歴任。専務を経て2011年6月から現職。大阪市出身。66歳。

 三洋化成工業が来年10月に化学大手の日本触媒と経営統合することで基本合意した。2社の売り上げ規模は単純合算で5千億円超。ともに紙おむつ原料の高吸水性樹脂(SAP)が主力で、業績も堅調だ。経営統合に踏み出す理由を安藤孝夫社長に聞いた。

 ―経営統合の道を選択したのはなぜか。
 「まず前提として、私には自社での事業継続に危機感はない。しかし統合すればさらに良くなると判断した。一つは高付加価値のニッチな製品を重視すること。もう一つは従業員の待遇を良い会社の方に合わせる『対等の精神』だ。当社が開発を進める新型リチウムイオン電池(LiB)やバイオ医療分野に注力してもらうことにも合意でき、最終的にゴーサインを出した」

 ―日本触媒を統合相手に選んだのは。
 「最初から経営統合を考えていたわけではない。日本触媒の五嶋(ごとう)祐治朗社長と事業環境などを話し合う中で、検討を始めた。日本触媒には優れた触媒技術と生産技術があり、SAPの原料のアクリル酸も自社製造していて当社と補完関係にある。SAPで稼いだ資金を電池事業などに投資できるのも魅力だ」

 ―日本触媒の資産規模は約2倍。のみ込まれる懸念はないのか。
 「新設する持ち株会社では、私が代表権のある会長、五嶋氏は社長に就く。今年末の最終契約で明らかになるが、新会社のガバナンス(統治)体制を見てもらえれば分かる」

 ―三洋化成が世界で初めて工業化に成功したSAPを「重視しない」と言う真意は。
 「会社の礎を築いたのがSAPなのは間違いない。紙おむつ需要の拡大で世界市場は年6、7%の成長を続けているが、コモディティー(汎用(はんよう)品)化が進み、ここ数年は業績も悪い。シェア低下を覚悟で値上げを断行した結果、日本や中国では販売量を落としたが利益は伸びた。価値が認められたということだが、売り上げ規模や過去の遺産であるSAPには固執せず、ニッチ製品にシフトする」

 ―開発中の全樹脂LiBの進捗(しんちょく)は。
 「用途は明かせないが、10月に実用化試験を始める。うまくいけば生産拠点用に13万平方メートルの土地を国内で取得する。当初の投資額は100億円ほどで、2021年の稼働を目指す。全樹脂電池は製造コストが安く、蓄電容量は大きく、安全性が高い。まずは定置型の用途で20年度中の実用化につなげたい」

【2019年08月09日掲載】