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地域根ざした文具開発

コクヨ工業滋賀開発グループリーダー 岡田佳美さん
コクヨ工業滋賀開発グループリーダー 岡田佳美さん
コクヨ工業滋賀開発グループリーダー 岡田佳美さん

 国内最大級のノート工場を滋賀県愛荘町で操業するコクヨ工業滋賀。琵琶湖のヨシを文具に活用する同社のプロジェクト「ReEDEN」に開発担当として立ち上げから関わり、現在はリーダーを務める。

 化学とモノの材料に関心があり、大学は材料科学科へ。文房具好きでもあり、製品開発を希望して同社に就職した。コクヨ本社の発注によるノートなどの製造を業務の中心とする同社で、初の開発担当を任じられた。

 開発グループのリーダーとして後輩を束ね、地域に根ざした個性豊かな文具開発を一手に担うが、元々は臆病で人と接するのが苦手だった。滋賀県で生まれ育ち、就職も地元。遠出したこともなく、就職まで飛行機に乗ったこともなかった。

 転機は英語と後輩。入社時に、苦手なのに「英語ができる」と言った後ろめたさから始めた英会話教室でコミュニケーションが楽しくなった。「後輩が来る前に飛行機に乗っておこう。海外にも行っておこう」と外に飛び出し、世界が広がった。

 それからは、体当たりで多くのプロジェクトに臨んできた。「ReEDEN」の象徴となるヨシ紙も困難を乗り越え2007年に製品化した。

 琵琶湖の環境を支えるヨシは刈ることで翌年の良好な生育が保たれる。よしずや屋根材として古くから使われてきたヨシで紙をつくり、環境のサイクルの一端を担えないか。製紙工程ではヨシは異物。業者と工夫を重ねながら優しい風合いのヨシ紙を完成させ、近年は年間約15トンのヨシを活用する。「苦労話や失敗談はたくさんあるが、プロセスを楽しめた。そういう製品ほど愛せる」と振り返る。

 ヨシに関する取り組みの知見を買われ、滋賀県の小学生が乗る琵琶湖の環境学習船「うみのこ」での講師を依頼され、教師というもうひとつの夢もかなえた。

 結婚、出産や子育てを経て仕事の幅が広がり「何でも楽しめる自信がある」。今、力を入れるのは「人間関係を深めるノート」。家族など身近な人のいいところや、子供が達成したことを形に残せるよう、けい線やデザインを工夫した。「何かを達成した感覚はないし、どんどん夢は広がる。文具で日本の未来を明るくしたい」

おかだ・よしみ 滋賀県立大工学部材料科学科卒。2002年コクヨ工業滋賀入社。入社時から現在まで開発担当で、06年開発グループリーダー、12年には社内で2人目の女性管理職に登用された。趣味はカメラ。夫と6歳、4歳の娘の4人家族。東近江市在住。40歳。

【2019年09月15日掲載】