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京扇子の技術、100年後へ

大西常商店 大西里枝さん
大西常商店 大西里枝さん
大西常商店 大西里枝さん

 京都市下京区の京扇子製造卸会社の長女に生まれ、入社1年あまりで扇子の技術を活用したルームフレグランス(室内芳香商品)を開発した。伝統工芸品の新たな用途を広げるユニークな発想が注目を集めており、「現代のニーズに合った商品をつくり、100年後に京扇子の技術をつなぎたい」と意気込む。

 子どもの頃から「いつか家業を継ぐのだろう」と考えながら育った。大学卒業後は「大企業で仕事の仕方を学びたい」と、NTT西日本に入社。光回線の販売企画などを担当後、結婚と出産を機に退社し、大西常商店に入った。

 入社してまずホームページを見直した。掲載情報を整理し、スマートフォンにも対応させた。フェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)での発信も始めた。「京扇子は伸びる余地があると感じていた。光回線と違い目に見える商品なので、販売を増やす自信はあった」と振り返る。

 ルームフレグランスは昨年末に開発した。京焼・清水焼の器に扇状に結んだ竹製の扇骨10本を差し込むと、香料を吸い上げて香りが広がる仕組み。「扇子は良い香りが長続きするね」との顧客の一言をきっかけにして昨夏に開発を始め、試行錯誤を繰り返しながら商品に仕上げた。1月に東京で開かれた雑貨の見本市に出展し、好評を博した。

 「扇子の需要は夏が中心だったので、通年の仕事をつくりたかった。父の考えと同じで、職人を大事にしたい」と話す。父親の大西久雄社長(64)も「若い発想で新しいものづくりに取り組んでおり、頼りにしている」と信頼を寄せる。

 現在は3歳の長男を母親や近所の知人に預けながら業務をこなす。「扇子が関わる文化も守りたい」と、京町家の本社を落語や日本舞踊などを行う場として貸し出す企画も行っている。若い女性に向けた自社ブランド商品も開発中だ。「固定概念にとらわれず、伝統技術を生かした製品をつくり続けたい」と前を見据える。

おおにし・りえ 2012年、立命館大政策科学部卒業。NTT西日本に入社し、福岡支店、熊本支店などに勤務。14年に結婚、翌年に長男を出産した。16年10月にNTT西を退社し、大西常商店に入社した。28歳。京都市右京区在住。

【2018年09月09日掲載】