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京滋・統一地方選を前に(5)

地域課題、向き合うのは誰か

政治への無関心、模索する有権者

自然の中で遊ぶ子どもを見守る川勝さん(京都市左京区花背別所町)

 台風が過ぎ去り、政治に対する考えが少し変わった。

 昨年8月下旬。台風20号の暴風で京都府内の山間部は倒木被害が広がった。京都市左京区花背に暮らす川勝雪貴さん(39)=写真左=は、知人たちと初めて企画した野外イベントの中止を覚悟した。開催前日、倒木を撤去して道路の通行止めを解除するよう市の土木事務所に何度も要望したが、答えは「間に合わせるのは無理」。ところが地域の人たちが何人かの市議に要請すると倒木はなくなり、開催にこぎつけた。

 「前にあった地方選挙が何だったかも覚えていないぐらいだったけど、台風の経験で政治に関心が出てきた」。3人の子どもは豊かな自然に恵まれて育つが、同世代は少ない。「花背で暮らし続けるには何が必要か」。地域で一緒に考え、行政に声を届けるには議員の存在が大きいと思うようになった。「議員に伝えたいことは伝えた方がいい」。今では知人から紹介された立候補予定者の考えに共感し、ビラ配りも手伝う。

 災害や困りごとをきっかけに、地方議員とつながる人がいる。社会問題に向き合いながらも政治色が出るのを避けたい人もいる。京都市内のある女性は、通学路の安全対策や観光客による迷惑行為への対応で複数の市議の活動に触れ、「議員の後押しの有無で要望が通るか通らないかが決まる役所もおかしい」と感じた。多様な暮らしの数だけ、自治への関わり方や考え方は異なる。正解はない。

 深刻なのは、自治について真剣に考える人と無関心な人との溝の広がりだ。平成に入って最初の京都府議選(1991年)の投票率は52・51%だったが、前回の2015年は41・75%となった。投票者数で比べると15万人近く減った。滋賀県議選は66・64%から46・54%に下がった。京都市議選も同じ傾向で、いずれも投票率は平成の始まりの時点で過去最低の水準だったにもかかわらず、手を打てないまま30年が過ぎた。

 この間、国政では政治改革を掲げて小選挙区制度を導入し、政権交代の可能性が出てきたことで有権者の関心が高まった局面もあった。その変化に比べれば、地方議会は人口減少を踏まえた定数削減が進むばかりで、選挙制度から見直して政治離れを食い止めようとする動きは鈍い。

 「本気で宮津市の少子高齢化を解消するため、構想中です」。今年1月、宮津市で1歳の子どもを育てる主婦大良咲月さん(22)はツイッターでつぶやいた。思いは壮大だが、地域の歴史や文化を調べたり、高校生らとメッセージをやりとりしたりと地道に調査を進めている。

 関東地方などで暮らしていたが結婚を機に宮津に移り住んだ。近くの幼稚園の入園児が1桁しかいないと聞き、少子化という言葉が地域の現実問題として身に迫ってきた。「自分にできることはないか」と思って始めたツイッターの反響から、「同じように地域の現状に危機感を持っている人の考えが分かる」。

 選挙権を持って初めて迎える統一地方選でも、自分なりの目線で一票を投じるつもりだ。「投票率が低いと嘆くだけでなく、候補者は若い世代に手を差し伸べてほしい」。自治の担い手として一歩を踏み出した有権者が、候補者の訴えに真摯(しんし)に耳を傾けようとしている。=おわり

【2019年03月14日掲載】