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高層住宅再建、高さ規制の壁

京都市・新景観政策で「不適格」物件に

マンションが立ち並ぶ京都市中心部(京都市中京区)=小型無人機から
マンションが立ち並ぶ京都市中心部(京都市中京区)=小型無人機から

 分譲マンションの老朽化が進む京都市内で、建物の高さに厳しい制限を掛ける市の新景観政策が、建て替えへのハードルとして立ちふさがる。市によると、市内での分譲マンションの建て替え例はまだない。現状の高さでの建て替えが認められない「既存不適格」の物件に関し、新年度からの新景観政策見直しに合わせ、特例措置の導入などを求める声が専門家から上がっている。

築41年超154棟特例求める声も

京都市内の築年数別の分譲マンション数

 「年金暮らしの高齢者は建て替えに反対する。合意を得るのは不可能だ」。市中心部のマンション管理組合の男性役員は打ち明ける。8階建て約40戸で築30年強の鉄筋コンクリート造の外壁にはひび割れなどが目立ってきた。「修繕を繰り返していくしか選択肢はない。いずれは廃虚になるかも」とため息をつく。

 分譲マンションの建て替えには所有者の「5分の4以上の合意」が必要という法的な要件に加え、このマンションは、2007年に始まった新景観政策で既存不適格の物件になった。高さは最大15メートルに制限され、建て替え時にはおおむね5階建て以下で建築しなければならず、所有者全員が再入居できない恐れもある。

 不動産関係者らによると、建て替えは築40年たったころから管理組合で話題になり始め、1戸当たり総額1千万円単位の資金が必要とされる。市内の分譲マンション1734棟(市把握分)のうち築41年以上は154棟ある。「田の字地区」と呼ばれる市中心部では平成期に急増した物件も後に控える。

 全国で建て替えに成功した分譲マンションの大半は、建物を建て替え前より高くするなどの大規模化で戸数を増やし、販売費用を建て替え予算に充当した。国土交通省は、耐震性不足の建物については容積率の緩和を一定条件で認めて建て替えを促している。

 一方、京都市では新景観政策で4割近い約650棟が既存不適格の状態に陥った。市は不適格マンションを対象に建て替えを支援する低利融資制度を設けたが、利用がないまま事業は終了した。

 市はホテル建設ラッシュによる住宅やオフィス不足を背景に、新景観政策の見直しについて有識者による検討委員会を昨年7月から今年3月まで開いた。市は検討委の答申を近く受け取り、見直しに着手するが、検討委で老朽マンションの建て替えに関する議論は出なかった。

 マンション問題に詳しい佛教大の谷口浩司名誉教授(社会学)は「不適格マンションの建て替えの際は、現状の高さでの再建を認めるといった特例措置が最低限必要だ」と提起している。


 既存不適格の物件  建築時は適法だったが、その後の制度改正によって基準を満たさなくなった建築物。増改築や建て替えを行う場合は、現行の基準に合わせる必要がある。京都市の場合は2007年の新景観政策で、建物の高さを10、15、31メートルなど6段階の上限で規制。市街地の約3割で上限が下がり、不適格物件が大量に生まれた。

【2019年03月31日掲載】