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「当然」「不当」割れる反応

「時代動いている」 金子被告
判決後、記者会見する金子勇被告(左)と弁護団(午前11時24分、京都市中京区)
「社会に生じる弊害を顧みず、独善的かつ無責任に開発した」。インターネット利用者の間で爆発的に普及したファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」の開発動機を司法が断罪した。十三日、京都地裁で開かれたウィニー事件の判決公判。映画などの違法コピーを助長させたとして、開発者の刑事責任を認める初の司法判断を示した。著作物を扱う団体は判決を評価する一方、支援者からは「不当判決」の声が上がった。技術開発の委縮を危惧(きぐ)する声も聞こえ、ネットの掲示板は午前中から賛否両論の書き込みであふれた。
 ネット社会に波紋を広げたウィニー開発者の金子勇被告(三六)は、判決言い渡し後、厳しい表情で記者会見に臨んだ。「残念だ。判決は技術開発を止めてしまう」。逮捕から二年半。金子被告は、訴え続けたソフト開発の正当性をあらためて強調し、裁判所の判断に不満をあらわにした。
 「私だけでなく、日本のソフトウエア技術者があいまいな『ほう助』の可能性に委縮して、有用な技術開発を止めてしまう。こうしている間にも時代は動いている」。金子被告は会見の冒頭、顔を紅潮させながら早口で思いを吐き出した。
 判決では、ウィニー利用者の著作権侵害を認識しながらソフトを開発、公開したとしたが、金子被告は「(利用者には)違法なファイルのやりとりはしないよう言ってきた。結果が悪いと何もかも悪いというのは納得できない」と反論した。
 ウイルスによるウィニーからの情報流出が相次いだことを受け、金子被告はすでに改良版ウィニーを開発しているが、弁護団は「有罪となった以上、改良版を出すわけにはいかない」と述べた。

判決に表情変えず

 氷室真裁判長が主文を読み上げると、大法廷の満員の傍聴席が静まり返った。金子勇被告は表情を変えずにじっと前を見つめ、弁護団は納得のいかない表情を隠さず、互いの目を合わせた。
 「著作権侵害の実態を明確に認識していた」「ほう助に当たる」。判決言い渡しが続くなか、金子被告はうつむいたまま、時折あごを突き出し、息を深くのみ込んでいた。
 地裁横の弁護士会館に集まった支援者約十五人にも、主文言い渡しの直後に一報が伝えられ、「不当判決」と書かれた紙が掲げられた。支援者の大阪府吹田市の男子大学生(二一)は「違法性を問われるべきは開発者でなく、悪意を持って使用した人だ」と不満の声を上げた。
 小雨が降るなか、京都地裁の駐車場には午前九時前から、六十二席の傍聴券を求めて二百八人が列をつくった。入廷前、身体検査と持ち物検査が行われ、地裁はメールで外部とやりとりできる携帯電話の持ち込みを禁止した。

金子被告の経歴

 1970年生まれ。小学生のころからコンピュータープログラムに興味を持ち、高校在学中に情報処理1級に合格。89年に茨城大情報工学科に進学してシミュレーション技術を研究し、同大学大学院で工学博士となる。  その後、日本原子力研究所の研究員となり、「天才プログラマー」を助成する経済産業省の未踏ソフトウエア創造事業のプロジェクトにも参加した。知人評は「寝食を忘れ、一人でプログラムに没頭するタイプ」  東京大特任助手だった2002年にウィニーを開発。開発を宣言したインターネット掲示板「2ちゃんねる」で、書き込み順が四十七番目だったことから「47氏」と呼ばれ、「天才」「神」と称賛された。  起訴後に保釈され、京都のベンチャー企業の顧問として、ウィニーの技術のビジネス面への応用に取り組んでいる。05年10月に「Winnyの技術」を執筆、出版した。