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PCウイルス作成者逮捕

全国初 著作権法違反疑いで大阪の院生 京都府警
 インターネットを使って、ウイルスを組み込んだ著作物のアニメ画像を無断で配布したとして、京都府警ハイテク犯罪対策室と五条署は二十四日、著作権法違反の疑いで、ウイルスの作成者とみられる大阪府泉佐野市の二十代の大学院生を逮捕した。コンピューターウイルスの作成者が逮捕されるのは全国で初めてという。
 調べでは、大学院生は昨年十月から十一月にかけ、自ら作成したウイルスを特定のアニメ画像に組み込み、アニメ制作会社の許可なくネットワークに流出させ、不特定多数の人がダウンロードできる状態にした疑い。
 大学院生が作成したウイルスは、ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」のネットワーク上で流通するウイルス「Antinny(アンチニー)」の一種で、通称「原田ウイルス」と呼ばれるものの亜種。感染するとパソコン内のデータが流出したり、破壊されるなどの被害が出る。
 国内では現在、ウイルスの作成を取り締まる法律がないため、法整備が急務となっている。府警はウイルス作成者を立件するため、今回、ウイルスに利用されたアニメ画像を無断で使用した著作権法違反を適用した。

≪Antinny(アンチニー)≫
 パソコンのファイルを自由に共有できるネットワークで主に流通しているコンピューターウイルス。二〇〇三年に、ウィニーのネットワークで流通していたことから名付けられた。中でも、ファイル共有ソフトの機能を悪用し、パソコン内の情報を流出させるウイルスが多い。また、他人にパソコン内部の情報をのぞき見られてしまうウイルスや、ファイルを勝手に削除する破壊型のウイルスも存在する。
≪Winny(ウィニー)≫
 インターネットを通じ、複数のパソコン利用者の間でファイルを共有できるソフト。日本で開発され、二〇〇二年五月にネット上で公開された。映画や音楽などのファイルを入手する手段として利用者が増えている。匿名性が高いため、違法コピーやわいせつ画像などのやりとりが多いとされ、著作権管理上の問題が指摘されている。ウィニーを通じて、パソコンに保存されているファイルをネット上に流出させるウイルスもある。
【2008年1月24日掲載】

アニメ著作物に着目 ウイルス作成 国内初摘発 法のハードル高く

 ネット上にまん延するウイルスの作成者の立件は、直接適用できる法律がなく、これまでは非常に困難だった。京都府警は、ウイルス本体ではなく、作成者が利用者をウイルスに感染させる「誘い水」として悪用したアニメ著作物に着目した。
 「原田ウイルス」にはさまざまな亜種が存在する。あるバージョンは、感染すると画面に「原田」という特定人物の氏名と宇治市内の住所、電話番号が記される。名誉棄損の可能性もあるが、その人物が実在するのか、また被害者なのか加害者側なのかの特定が困難だった。
 別のバージョンは、特定の県警の名前を使い、「重要なお知らせ」として、著作権侵害の調査を装う文章が記され「電源を落とさないで」などと呼び掛けていた。利用者が文章を読んでいる間にウイルスを100%感染させていたとみられる。
 府警は器物損壊や業務妨害などの容疑も考えたが、立件には法律上のハードルがあったという。
 現在、国会で、ウイルスの作成者や所持した人を罰する「ウイルス作成罪」を盛り込む刑法改正案が審議中だ。立法化を前に、府警はウイルス本体ではなく、ウイルスに組み込まれたアニメ画像に注目し、著作権法違反での立件にこぎつけて、ウイルス作成者に警鐘を鳴らした。

原田ウイルス 機能障害起こす

 「感染!ダァ。原田ウイルス」。インターネットのファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を利用するパソコン画面に突如、ウイルス感染を伝える文言が表示される。パソコンに感染して機能障害を引き起こす「原田ウイルス」の亜種とされるウイルスの作成者が二十四日、京都府警に逮捕された。
 ネット上には多種多様なウイルスが存在する。感染者の私物パソコンから、警察など公官庁の機密情報が流出する被害も相次いでいる。
 府警などによると、「原田ウイルス」は、ウイルスに感染したファイルを実行すると、「原田」という人物が画面に登場することから名前が付いた。感染するとパソコンが使えなくなり、さまざまなバージョンが存在する。ウイルス対策の「ワクチンソフト」を提供する会社がウイルス駆除ソフトを提供しているが、新しいウイルスは次々と誕生しており、「原田ウイルス」も比較的新しいウイルスという。ウィニーをめぐっては、ウイルス感染者のパソコン情報が外部に流出する例が後を絶たない。二〇〇四年には京都府警や北海道警の捜査書類が、警察官のパソコンから流出した。その後も岡山、愛媛県警でウィニーを通じて事件被害者らの個人情報がネット上に流れた。こうした事態を受け、警察庁は〇六年三月、公私問わずウィニーの使用禁止を求める通達を全国の警察に出した。

ウイルスの相談 昨年は3万4000件

 インターネットのウイルス対策などに取り組む経済産業省の外郭団体「情報処理推進機構(IPA)」(東京)によると、メールでウイルスが不特定多数の利用者にばらまかれるようになった二〇〇〇年以降、ウイルスの種類が増えた。企業などからIPAに寄せられる被害や相談の届け出は、昨年だけで約三万四千三百件に上り、世界中で出回っているウイルスは二十−三十万種類あるという。
 「原田ウイルス」は、情報漏えいなどにつながる「暴露型」とは違い、特定の映像を画面に表示して裏でパソコンのプログラムを壊す「破壊型」とされる。ウィニーを介してしか感染しないため、月に数件の相談がある程度で被害は確認していない。IPAは「被害に遭ってもウィニー利用者ということで申告しにくいのでは」としている。
 IPAは「海外ではウイルス作成者が逮捕されるケースはあるが、日本では聞いたことがない」と話している。