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インデックス

体力の低下、技術で補う

6年後の栄冠


全日本実業団対抗駅伝で3区を走った赤羽有紀子(左)や福士加代子(左から2人目)ら30代のベテラン勢=2013年12月15日、仙台市
全日本実業団対抗駅伝で3区を走った赤羽有紀子(左)や福士加代子(左から2人目)ら30代のベテラン勢=2013年12月15日、仙台市
 小雪が舞った昨年12月15日。仙台市で行われた全日本実業団対抗駅伝のエース区間3区に、30代ランナーの顔が並んだ。五輪や世界選手権を経験したノーリツの小崎まり(38)、シスメックスの野口みずき(35)、ホクレンの赤羽有紀子(34)…。第一線で活躍する選手寿命が延びている今、東京五輪は幅広い世代のランナーにとってチャンスとなる。

■母と選手両立

 「まさか、こんなしつこく陸上をするとは」と小崎が笑みをこぼす。2007年に結婚し、11年の出産から1年半後の大阪国際マラソンで4位入賞。育児、家事と競技を両立するトップランナーだ。「誰もが思ってないことをするのは楽しい。『これ以上はできない』と思うことがなかったから続けられた」と常に前向きだ。

 陸上エリートの歩みとは違う。宇治高(現立命館宇治高)では当初練習についていけず、大阪短大(現太成学院大)ではアルバイトや飲み会もある普通の学生生活。でも、「競技者としては無駄と言われるような2年に意味があった」。楽しんだ分、社会人になって競技に集中できた。

 出産、育児への会社のサポートも大きかった。ノーリツの森岡芳彦監督(55)は「彼女はギアがいつもニュートラルにある。勢いだけの若手とは違う柔軟性がないと、レースには勝てない」。年を重ねても自然体の輝きを失っていない。


大阪国際女子マラソン招待選手として会見する(左から)小崎まり、赤羽、渡辺裕子の3選手=同年12月18日、大阪市
大阪国際女子マラソン招待選手として会見する(左から)小崎まり、赤羽、渡辺裕子の3選手=同年12月18日、大阪市
■一番は気持ち

 赤羽も「ママさんランナー」だ。夫で専任コーチの周平さん(34)と二人三脚で世界舞台に立った。長く続けられた理由は「一番は気持ち。目標を持って走ること」。26日の大阪国際マラソンを最後に引退するが、全日本実業団対抗駅伝は3区6位と地力を見せた。

 科学的な練習方法の確立や栄養面の改善、格段に進んだけがの治療法…。選手を取り巻く環境は大きく変化した。日本陸連科学委員会副委員長の榎本靖士筑波大准教授(40)も「一般的に20代後半から体力は落ちるが、技術は高まるのでパフォーマンスを維持できる。体力が落ちる前から意識すれば技術をさらに磨ける」と、年齢を重ねながらも選手が記録を伸ばす可能性を指摘する。

 「生活の中に、競技を連動させるのが一番いい。刺激を与える人でありたい」と小崎の意欲は衰えない。赤羽は「結婚や出産をして走る、というのを『できるんだ』と思う子がちょっとは増えてくれたかな」。東京五輪でメダルを狙う日本勢に彼女たちが新たな可能性を示している。


【2014年1月9日掲載】