社説 京都新聞トップへ

殺人ロボット  完成する前に規制を急げ

 「いいもわるいもリモコンしだい」というのは、日本の巨大ロボットアニメの草分け、「鉄人28号」の主題歌の一節だ。思い出す方も多いだろう。
 正太郎少年のリモコン操作で正義の味方として活躍する鉄人。もとは太平洋戦争の秘密兵器として開発されたとの設定だった。
 こちらの「殺人ロボット兵器」にはリモコンも、人間の意思を介することも必要ない。人工知能(AI)で自律的に判断し、敵を殺傷する。各国が水面下で開発を進め、実用化が近いのではと危惧されている。
 このまま放置はできないと日本政府は、あす25日から開かれる国連会議で、開発規制への支持を表明する方針だ。
 規制に向けた専門家による委員会の新設も提唱するという。各国の思惑から規制実現のハードルは高いようだが、ぜひ主導的な役割を果たしてほしい。
 殺人ロボット兵器は「自律型致死兵器システム」(LAWS)という。SF映画「ターミネーター」に登場するロボットのイメージに近いそうだ。
 実現すれば戦争の姿を大きく変えるのは間違いない。銃、核兵器に次ぐ軍事面での「第三の革命」になるという指摘があるのもうなずける。
 各国は2014年から、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで会合を重ねるが、議論は進んでいない。
 国際人道法や倫理の観点から、中南米などの途上国は禁止条約制定を求めている。一方で開発技術を持つ米国、ロシアなどは「時期尚早」と規制に否定的だ。
 開発が進むのは、自国の兵士を傷つけずにすみ、経費の削減にもなると考えられているためだ。ロボットは判断が確実で動作が素早く、怒りや恐怖に駆られて相手をむやみに殺傷することがないとの主張もある。
 だが指導者が安易に戦闘を始めるようになり、結局は死傷者が増えるとの見方もある。誤作動や、サイバー攻撃でテロリストなどの手に渡ってしまう危険性も拭えない。
 1990年代以降、米国を中心にIT技術が兵器システムに盛んに応用され、ハイテク化が進んだ。
 現在は無人機のドローンを遠隔操作して敵を攻撃している。誤爆で多くの一般市民が被害に遭っているのも事実だ。人道的にも明らかに問題がある。
 国際社会は生物兵器や化学兵器、対人地雷などを禁じてきた。失明をもたらすレーザー兵器のように一度も実戦で使われないまま禁止された例もある。
 殺人ロボットが完成してからでは、規制が手遅れにならないか。開発者が反省した核兵器の悲劇を繰り返してはならない。
 日本政府は従来は、AIやロボットの分野で競争力を持つ日本企業の技術開発の妨げになりかねないと規制に慎重だった。
 遅まきながらロボットの平和利用を強く訴えるべきだ。国際ルールが確定するまで、開発の凍結を求めたらどうか。
 日本人にはロボットを「友達」とみる独特の感覚があるといわれる。友達を戦場に送るようなことがあってはならない。

[京都新聞 2019年03月24日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)