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捕鯨の国際交渉  方針転換視野に入れよ

 日本は捕鯨政策を根本から練り直す必要がある。
 国際捕鯨委員会(IWC)の総会がこのほどブラジルで開かれ、日本による商業捕鯨の一部再開提案が否決された。逆に商業捕鯨の停止継続が重要とする決議が採択され、商業捕鯨の再開は極めて困難な情勢になった。
 日本は今回の総会で、商業捕鯨の一時停止の解除と、捕獲枠や保護区の設定などの決定手続きを緩和する提案を合わせて提案した。
 保護区の設定をしやすくすることで反捕鯨国に配慮を見せる狙いがあったが、門前払いとなった。
 今総会を日本政府は捕鯨停止解除のチャンスと踏んでいた。約半世紀ぶりに日本人が議長を務めたことと、従来は反捕鯨の米国が、アラスカ先住民の捕鯨枠を要求する6年に1回の年に当たったためだ。
 米国などの軟化を期待した日本だったが、実際には、先住民の捕獲枠だけが早々に認められた後、、米国は日本提案に反対した。
 日本に対する厳しい視線が改めて浮かび上がった。背景には日本が国際社会の厳しい批判を受けながらも南極海で調査捕鯨を続けていることがある。
 2014年に国際司法裁判所(ICJ)は日本の調査捕鯨を国際捕鯨取締条約違反として中止を命じる判決を出した。調査名目だが、実際には「余った」とされる鯨肉が市場に流通しており、ICJは「事実上の商業捕鯨」という提訴国の主張を認めた。
 日本は規模を縮小したがその後も調査捕鯨を続けている。捕鯨に関しては、日本は「国際ルールを守らない国」と見られている。
 今総会の結果を受け、谷合正明農水副大臣はIWCからの脱退の可能性に言及した。IWCの加盟国が増加し、機能不全に陥っている面はある。だが脱退すれば南極海での調査捕鯨はいよいよ困難になるうえ、幅広く外交問題になりかねない。脱退は現実的な選択肢ではなかろう。
 日本の遠洋商業捕鯨は昭和初期に大型船が導入されたのに伴い本格的に始まった。和歌山県や千葉県などの沿岸で古くから続いている小型鯨類の捕獲とは分けて考える必要がある。伝統的な捕獲法や鯨食文化を守るなら、文化的理由の捕獲枠を主張するべきだ。
 商業捕鯨を担っていた大手水産会社はグローバル企業に成長している。海外消費者や株主の反発を想定すれば、商業捕鯨への再参入は期待できないのではないか。

[京都新聞 2018年09月18日掲載]

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