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共通番号法案  国民的な論議をもっと

 政府が、社会保障・税の共通番号法案(マイナンバー法案)を国会に提出した。国民一人一人に番号を割り振り、納税や社会保障給付の情報を一元的に管理する法案である。
 民主党政権が昨年2月、消費増税の低所得者対策として検討した「給付付き税額控除」に必要だとして国会に提出したが、衆院解散を受けて廃案になっていた。自民、公明、民主3党が修正協議して合意した内容を踏襲しており、政府は今国会で成立させ、2016年1月から利用を開始したい考えだ。
 共通番号制は、行政事務の効率化が期待される半面、国が広範な個人情報を集めることから情報流出、悪用が懸念されている。プライバシーなど国民生活のさまざまな場面に影響を与える法案であり、与野党はじっくりと議論を深めてもらいたい。
 法案は、納税実績や年金、介護など別々に管理している情報を共通の番号で集約し、公正な納税や効率的な社会保障給付を実現するのが狙いだ。番号の利用範囲は社会保障と税、災害対策に限定し、施行から3年後をめどに範囲拡大を検討するとしている。
 希望者には、顔写真を載せたICカードを交付し、税の申告や年金の受給申請に利用する。申請の際に書類をそろえる手間などは少なくなるほか、医療や介護を合わせた世帯ごとの自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」なども導入しやすいと政府は説明する。
 一方、情報漏れ対策として、独立性の高い第三者機関を設置して行政機関への立ち入り検査などの強い権限を与える。漏えいにかかわった職員らには最高で4年以下の懲役、または200万円以下の罰金を科す。逆に言えば、悪用された場合の被害はそれほど大きいということだ。
 広範な情報が集約されるだけにいったんネットワークシステムに不正侵入されると深刻なプライバシー侵害が起きかねない。実際「社会保障番号」を導入している米国では「なりすまし」が社会問題になっている。行政の効率化のために国民の個人情報が犠牲になっては本末転倒だ。
 社会保障や税の公平性を担保するのに必要だとする所得の正確な把握にしても、海外資産や事業所得、商取引などの全てを把握することは不可能といわれる。数千億円とされる導入費用に見合う効果はあるのか、さらに民間利用を含めて将来の利用範囲をどこまで認めるのか、など検討すべき点は多い。
 制度の国民への浸透度はまだまだ低い。拙速を避け、論議を尽くしたい。

[京都新聞 2013年03月03日掲載]

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