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受刑者の選挙権  一律制限の見直し急げ

 国民の権利である選挙権の重さと、受刑者も社会の一員であることを示したといえる。受刑者の選挙権を認めない公選法の規定について、大阪高裁は「一律に制限するやむをえない理由があるとはいえない」とし、違憲と判断した。
 判決は、二つの問題を提起している。
 一つ目は、選挙権の制限を撤廃する司法の流れに対する、政治の感度の鈍さである。
 在外邦人の選挙権制限をしていた公選法の規定に対し、最高裁が違憲判断を下し、「公正確保が著しく困難でない限り、制限は許されない」との基準を示したのは2005年のことだった。今年3月に東京地裁は、認知症や知的障害を持つ人らが成年後見人を付けた場合、選挙権を剥奪する公選法の規定を違憲とした。
 国は公選法を改正し、在外邦人や後見を受けている人の投票制限を削除した。だが、最高裁が示した考え方を本気で受け止めていれば、もっと早く受刑者の投票制限見直しに着手できたはずだ。公選法11条で成年被後見と受刑者の投票制限は、続けて書かれていた。
 国政参加の機会を保障することは議会制民主主義の根幹だとした大阪高裁判決は、明快だ。安易な投票制限は許されない。
 二つ目の問題は、受刑者の人権保障や処遇改善の遅れだ。
 名古屋刑務所の受刑者死傷事件で設けられた行刑改革会議は、世間から取り残され、中からの声が聞こえない刑務所の「塀の高さ」を指摘し、受刑者に人間としての誇りや自信を回復させることで、再犯防止と社会を担える存在にしていく方向を提言した。
 これを受けて05年、明治以来続く監獄法が約100年ぶりに全面改正された。だが、選挙権の問題は見過ごされ、手つかずだ。
 判決が指摘するように、憲法改正の国民投票では受刑者も投票できることを思うと、一律に選挙権を制限することは合理性を欠く。
 全国で刑が確定している成人の受刑者は5万人を超える。全員に投票を認めると、候補者の情報を伝えるため、選挙公報や放送などの情報保障も整える必要が出るだろう。刑務所を管理する側の事務負担は増えるが、情報アクセス改善に取り組む契機としたい。
 外国では、受刑者の投票機会を全面的に認めている国や、量刑の重さで一定の線引きをした上で認めている国がある。
 1票を投じる国民の権利と、社会の一員としての責務に向き合うことは、受刑者が自律性や規範意識を取り戻す一助にもなる。国は司法の指摘に耳を傾け、法改正の検討を急ぐべきだ。

[京都新聞 2013年09月30日掲載]

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