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身を切る改革  国民との約束どうした

 衆院はきょう解散される。
 これにより安倍晋三首相が看板に掲げた「女性活躍推進法案」などが廃案となるが、消費税増税に伴う「身を切る改革」と位置付けた議員定数削減も先送りされた。安倍氏が2年前に民主党政権下の党首討論で交わした国民への約束は果たされないまま選挙戦に入る。
 党首討論で、当時の野田佳彦首相は、国民に負担増を求める以上、国会議員も定数を削減し身を切る必要があるとし、それを約束してくれるなら解散すると迫った。これに安倍氏は「来年(2013年)の通常国会でしっかりやっていくと、この場で約束する」と応じ、総選挙となった。
 結果、自民党は政権に返り咲いたが、今年4月、消費税率を8%に引き上げただけで、定数削減はいまだに実現していない。約束の不履行と言わざるをえない。
 この間、与野党は小選挙区の「0増5減」を行ったが、「1票の格差」を抑えるため、最低限の削減と区割り見直しでお茶を濁したに過ぎない。
 定数削減問題は、与野党の思惑が絡んで話し合いがつかず、結局、衆院議長の下で選挙制度改革を検討する第三者機関に委ねられた。答申に法的な拘束力はないとはいえ、与野党は本気で身を削る覚悟を示せるかが問われよう。解散でうやむやにするようなことはあってはならない。
 安倍首相は選挙制度改革について、国会で議論すべき問題だと言うばかりで、党総裁として定数削減に向け指導力を発揮してきたとは言い難い。定数削減の実現まで続けるとしていた議員歳費の削減も、今年4月末で早々と打ち切られた。これでは国民の政治不信は深まるばかりだ。
 1票の格差の問題も解決していない。前回衆院選について最高裁は昨年11月の判決で、最大2・43倍の格差となった小選挙区の区割りを「違憲状態」と判断した。「0増5減」でいったん2倍以内に収まったが、再び2倍を超える選挙区が増えている。人口に関係なく都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」を事実上残したためだ。最高裁は1票の格差を生む要因として見直しを求めており、公平な制度への是正は大きな課題だ。
 政治とカネの問題を含め、「身を切る覚悟」とは程遠い現実ばかりが目立つ。自民、公明両党は、共通公約に定数削減を含む衆院選挙制度改革を盛り込む方向というが、うわべだけの約束はもう通用しないことを肝に銘じてほしい。

[京都新聞 2014年11月21日掲載]

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