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再犯なくす支援  制度として定着が課題

 万引などの軽い犯罪を重ねる知的障害者や高齢者を逮捕段階から福祉の視点で支える動きが広がっている。京都地検は一昨年8月から取り組みを本格化させ、社会福祉士(ソーシャルワーカー)による福祉支援を受けた当事者に再犯はほぼ確認されなかった。
 本来は支援の対象者なのに、仕組みを知らないために福祉や医療につながれずに孤立を深め、再び罪を犯して刑務所などの矯正施設に戻る高齢者や障害者は多いといわれる。犯罪白書によると、2014年に刑務所に入った高齢者のうち再犯者は7割を超え、12年の法務省の調査では受刑中の知的障害者の入所回数は平均3・8回にのぼる。
 刑務所を出た後の出所者に福祉的支援を行うのを「出口支援」と呼ぶのに対し、逮捕や裁判段階で社会福祉士の意見を聞く機会を持つことを「入り口支援」という。
 入り口支援はここ数年来、滋賀県など各地で試行的に始まっている。滋賀では地域生活定着支援センターが橋渡し役になってきた。
 京都地検が始めた入り口支援は被疑者が適切な支援を受ければ再犯に至らないと判断すれば、社会福祉士と面談を行う。保護者や支援者の有無や住まい、生計について本人に必要な支援を助言したうえで、最終的に検察官が起訴か不起訴かの処分を決めている。
 昨年末までに社会福祉士4人が窃盗や無賃乗車などで逮捕された約40件について面談を実施し、うち25件を追跡調査した結果、1件を除いて再犯がなかったという。
 窃盗と傷害で送検された70代の容疑者は初期の認知症と診断された。面談した社会福祉士が症状は進んでいると助言し、起訴猶予になった後に要介護認定を受けてデイサービスに通いながら安定した生活を送っている例もある。
 適正な処遇を受けることは本人の人権でもある。一方で、刑務所収容者の高齢化が進み、入所中の医療費負担を含めた税コストが増大している。収容者を抑制する意味でも、被疑者の福祉支援の意義は大きいといえる。
 こうした試行的取り組みを定着させ、制度として確立するかが課題だ。そのためにも、支援の具体的な成果を国レベルで検証することが欠かせない。
 制度設計に当たっては、取り組み方法が各地で異なる点も留意したい。検察庁主導や弁護士会が運用に深く関わる地域もある。詳細な比較検討が必要だ。さらに、実際の逮捕や取り調べに当たる警察の理解を得ることも前提になる。

[京都新聞 2016年01月14日掲載]

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