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米一般教書演説  排外主義、克服できるか

 オバマ米大統領が政権最後の一般教書演説を行った。テロとの戦いや非核化、環太平洋連携協定(TPP)の早期発効など幅広い分野で施政方針を示したが、任期終了までの1年でどれだけ成果を残せるだろうか。
 オバマ氏はテロについて、過激派組織「イスラム国」(IS)が米国や世界の脅威になっていると指摘し、壊滅への決意を表明した。
 米国はイラク、シリアで地元部隊支援や幹部掃討を進めるが、シリアの和平交渉は緒に就いたばかり。シリアのアサド政権を支援するイランと、反体制派を支えるサウジアラビアの断交も大きな痛手だ。ISの台頭につながった中東の混乱を収束させる実効策は不透明だ。
 さらにオバマ氏は、共和党の大統領候補指名争いで目立つ排外主義的な主張を念頭に、「政治家がイスラム教徒を侮辱しても米国は安全にならない」と批判した。カリフォルニア州の銃乱射事件で米国内に広がったテロへの不安や排外主義を克服し、社会の融和を図れるかが問われる。
 オバマ氏は2009年4月、チェコ・プラハでの演説で核兵器廃絶を訴え、ノーベル平和賞を受賞した。「核兵器なき世界」は大きなテーマだ。一般教書演説では2期目に重点的に取り組んだイランの核兵器開発阻止に言及し、「世界は戦争を回避した」と強調した。昨年7月のイラン核合意は一つの成果と言える。
 しかし、北朝鮮は今月、オバマ政権下で3回目となる核実験に踏み切った。国連や日中韓と連携して朝鮮半島の非核化を前進させる戦略の練り直しが急務だ。
 任期内のTPP発効についても壁が立ちはだかる。
 オバマ氏は「アジアでの米国の指導力を高める」とし、議会の早期承認を求めたが、過半数を占める野党共和党からは、審議を大統領選後に先送りするよう求める声が上がる。労働組合の支援を受ける与党民主党の議員の多くは、雇用が奪われるとTPPに批判的だ。大統領選の主要候補であるクリントン前国務長官(民主党)や実業家のトランプ氏(共和党)も反対している。オバマ氏がどう説得するかが焦点となる。
 いずれの課題も解決に道筋をつけるには、政策の丁寧な説明を通じて国民の理解を得ることが欠かせない。オバマ氏が掲げてきた「チェンジ(変革)」の実現へ、あらためてリーダーシップを発揮すべきだ。

[京都新聞 2016年01月14日掲載]

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