社説 京都新聞トップへ

シャープ再建策  公的支援は限界がある

 業績不振のシャープは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から7千億円規模の出資を受けて傘下で経営再建を目指す方向になった。
 支援策を官民ファンドの産業革新機構も競ったが、豊富な資金力で破格の条件を示した鴻海が優位に立った。海外企業による国内大手メーカーの巨額買収は衝撃的にも映るが、世界では珍しくない。シャープの経営判断は市場の論理に沿うものと理解できる。
 機構は国産技術の流出阻止と業界再編を狙ったが、官主導の企業再生には限界がある。雇用面など影響に注意しつつ、国内産業強化の進め方も見直す必要があろう。
 シャープ再建策では、政府が大半を出資する機構の支援が有力視されてきた。電子機器の受託製造サービス(EMS)で世界最大手の鴻海は、出資額を機構提案の2倍超に上積みして逆転した。資金面の有利さに加え、液晶など各事業を一体的に再生させ、雇用などを維持する方針も後押しになったようだ。
 鴻海の狙いは、高い技術を持つ液晶や電子部品などの事業を取り込んでの業容拡大だ。シャープの高橋興三社長は鴻海の強い部品調達、生産能力と「大きな相乗効果がある」と説明。技術流出についても共同運営している堺市の工場で「全くなかった」と否定する。
 ただ、鴻海は2012年にも出資を決めながらシャープの株価急落で見送った経緯があり、確実な支援実行に不安も残る。液晶以外の事業の再建策が不明確との指摘もあり、今後いかに雇用や生産拠点を維持し、根強い技術流出への懸念に対応していくか、具体的な計画を示してもらいたい。
 一方、機構は事業戦略の再検討を迫られそうだ。シャープ支援は重要技術や人材の海外流出を防ぐだけでなく、液晶など事業ごとの業界再編で国際競争力を高める「日本連合」実現のもくろみがあったが、再編優先の事業切り売りとシャープに疑念を抱かせた面は否めない。投資の回収ができなければ国民負担となるため、支援額や再建方法が当然限られることを再認識する必要があろう。
 以前から機構の企業支援は不採算の大企業救済と批判があり、業界再編への直接関与も疑問視されている。雇用や地域経済への影響を理由に掲げるが、全国各地で多額の助成や税優遇を受けた企業が数年で撤退や海外移転する例が少なくない。産業強化策の目的や効果、企業の責任を明確にし、国民への十分な説明が欠かせない。

[京都新聞 2016年02月06日掲載]

バックナンバー